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最高裁判所が平成30年の医事関係訴訟事件の状況を公表
平成30年の医事関係の新たな訴訟は785件で減少傾向 2019.06.17健康・医療

最高裁判所は5月20日付けで、平成30年の医事関係訴訟事件統計(速報値)を公表した。ここでいう医事関係訴訟事件とは、地方裁判所(以下、地裁)および簡易裁判所(以下、簡裁)に提訴された、いわゆる医療裁判のことである。同統計によると、同30年において地裁および簡裁が新たに受けた(以下、新受)医事関係訴訟事件は785件で、前年より54件(6.4%)減少している。また、同30年において審理が終了した(以下、既済)医事関係訴訟事件の主要な診療科目については内科が25.0%、外科が15.9%、歯科が12.8%を占め、その3診療科で過半数となっている。

ポイント

  • 訴訟のピークは平成16年、以後は減少傾向
  • 判決に至るのは3割程度、和解が5割超に
  • 医事関係訴訟事件の診療科は内科・外科・歯科で過半数

弁護士は増えるも、医事関係訴訟事件は減少傾向

我が国では平成11年に、大病院において、患者を取り違えて手術を行ってしまう医療事故、薬剤の取り違えが原因と考えられる入院患者死亡事故などが相次いで起こり、マスコミにおいて、医療事故が大きく取り上げられるようになった。それを契機に、患者・国民においても医療事故に対する関心が高まった。

そのような状況を背景に、医事関係訴訟事件の新受は、平成11年に678件であったのが同16年には1,110件というように、6割以上の増加をみせた。その新受の件数は同16年をピークに同21年には732件にまで減少した。その後、増加したものの、同24年が788件で、この年までは700件台で推移している。このように同17年から同24年にかけて医事関係訴訟事件が減少傾向を示した要因については、①医療機関での医療安全対策が進んだ、②いわゆる無過失補償制度としての「産科医療補償制度」が同21年に創設された、③裁判外紛争解決手続き(ADR)の制度が普及した――などが推測されている。また、それらの要因が複合していることも考えられる。

平成23年以降、医事関係訴訟事件の新受は同28年に862件となるなど、増加の傾向を示していた。しかし、同29年が839件、同30年が785件(速報値)となり、減少傾向に転じている(下図参照)。

その間、司法制度改革により、ロースクールを卒業して司法試験に合格した弁護士が急増した。日本弁護士連合会(日弁連)の『弁護士白書2018年版』によると、弁護士数は平成20年3月末で2万5,041人だったのが、同30年3月末には4万66人となり、この10年間で1.6倍になっている。そのように弁護士が急増していることを背景に、医事関係訴訟の分野に参入する弁護士あるいは弁護士事務所も増え、医事関係訴訟事件も増加する、という見方がある。しかし、現状では、そのような兆しは現れていない。

判決総数において原告側の請求が認められた割合は18.5%

平成30年において審理が終了するなど終局した医事関係訴訟は803件、うち判決に至ったのは253件(31.5%)で、和解が過半数(421件、52.4%)を占めている。それら以外では取下(37件、4.6%)などがあるが、「その他」に分類されるものも89件(11.1%)ある。医事関係訴訟事件が急増した同11~16年頃と比べると、判決が10ポイント程度減り、その分、和解が増える傾向にある。

医事関係訴訟事件での認容率、つまり判決総数に対する認容(一部認容を含む)件数の割合は、原告(患者)側の請求が認められた割合を意味するため、マスコミなどでは「患者側の勝訴率」などと表現されることも多い。地裁でのその認容率は、平成30年では18.5%で、前年と比べて2.0ポイント低下した。同12年~16年頃の認容率は40%前後であり、当時と比べると認容率は半分程度になっている。ただし、和解の割合は増える傾向にあり、判決になれば一部認容に相当するような事件が和解に移行していることも考えられる。

また、平成30年における一般の民事訴訟での認容率は85.5%であり、それに比べると医事関係訴訟事件の認容率は非常に低い。判決まで持って行っても勝訴する可能性は小さいわけで、それならば和解を選ぶという原告側の方針を背景に和解が増える傾向にある、という推測もできる。

診療科については全体として大きな変化はなし

地裁における既済の医事関係訴訟事件を診療科(複数の場合は主要な1診療科)別でみると、平成30年の場合、最も多いのが内科で192件(25.0%)。次いで、外科122件(15.9%)、歯科98件(12.8%)、整形外科84件(11.0%)、産婦人科47件(6.1%)、精神科(神経科)37件(4.8%)などとなっている。

また、平成28年以降で比較すると、内科が増え、「その他」が減る傾向にあるが、全体として大きな変化はない。(下表参照)

医事関係訴訟事件(地裁)の診療科目別既済件数

診療科目\年 平成28年 構成比 平成29年 構成比 平成30年 構成比
内科 170 22.7% 178 23.7% 192 25.0%
小児科 8 1.1% 10 1.3% 7 0.9%
精神科(神経科) 33 4.4% 28 3.7% 37 4.8%
皮膚科 14 1.9% 12 1.6% 17 2.2%
外科 114 15.2% 112 14.9% 122 15.9%
整形外科 87 11.6% 100 13.3% 84 11.0%
形成外科 25 3.3% 30 4.0% 24 3.1%
泌尿器科 11 1.5% 8 1.1% 16 2.1%
産婦人科 52 6.9% 54 7.2% 47 6.1%
眼科 15 2.0% 22 2.9% 19 2.5%
耳鼻咽喉科 14 1.9% 8 1.1% 10 1.3%
歯科 91 12.1% 88 11.7% 98 12.8%
麻酔科 6 0.8% 9 1.2% 4 0.5%
その他 110 14.7% 91 12.1% 90 11.7%
合計 750 100.0% 750 100.0% 767 100.0%

出典:最高裁判所「医事関係訴訟事件統計」

  1. (注) 1 複数の診療科に該当する場合は、そのうちの主要な1科目に計上している。
  2. 2 平成30年の数値は、速報値である。

以上の各診療科の数値(件数)について、最高裁判所では、各診療科における医療事故の起こりやすさを表すものではない、と強調している。仮に、何らかの頻度を示す数値としてみる場合でも、例えば厚生労働省の医師・歯科医師・薬剤師調査での「診療科別にみた医師数」などを用いて補正をする必要があろう。