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「外国人患者の受入れのための医療機関向けマニュアル」を公表
オリンピックなどで訪日外国人旅行者が急増することに対応 2019.05.09健康・医療

厚生労働省(以下、厚労省)は2019年4月11日、平成30年度厚生労働省政策科学推進研究事業「外国人患者の受入環境整備に関する研究」研究班による「外国人患者の受入れのための医療機関向けマニュアル」を公表した。これは、2019年のラグビーワールドカップ、2020年の東京オリンピック・パラリンピックなどで訪日外国人が急増することなどを踏まえて厚労省「訪日外国人旅行者等に対する医療の提供に関する検討会」(以下、検討会)で内容の確認と了承がなされたもの。①外国人患者に関連する制度、②外国人患者の円滑な受入れのための体制整備、③場面別対応、という構成になっている。

ポイント

  • マニュアルの対象は在留と訪日外国人旅行者の患者、医療目的で日本の医療機関を受診する外国人は対象外
  • 外国人患者に関連する制度、体制整備、対応を解説

外国人対応マニュアルが整備されている病院は7%程度

厚労省は検討会と連動する形で「医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査」を行い、2019年3月29日、その結果を公表した。それによると、2018年9月の調査時点で、病院(5,611件)において外国人患者対応の専門部署があるのはわずか1.4%(81件)であった。また、外国人対応マニュアルについては「整備されている」が6.9%(385件)、「整備されていない」が89.1%(4,998件)である。それを救急医療機関(2,564件)に限ってみると、「整備されている」が10.7%(275件)、「整備されていない」が85.2%(2,185件)で、病院全体でのそれぞれの比率(前出)と大きくは違わない。

そのような状況を踏まえて、厚労省は「外国人患者の受入れのための医療機関向けマニュアル」(以下、マニュアル)を作成、公表した。マニュアルが対象とするのは、①在留資格を持って日本に在留している「在留外国人患者」、②観光や仕事で日本滞在中に病気や怪我のために治療が必要となった「訪日外国人旅行者患者」である。例えば医療ツーリズムなど、医療目的で日本の医療機関を受診する外国人は対象外となっている。

マニュアルの構成は下表のとおりである。

マニュアルの構成

第1章 外国人患者に関連する制度
  1. 1. 医療機関における外国人患者受入れ体制整備の重要性
  2. 2. 在留資格(ビザ)
  3. 3. 日本の医療制度の紹介
  4. 4. 海外旅行保険
  5. 5. 外国人患者受入れ医療機関
  6. 6. 医療通訳の標準カリキュラム基準・認証制度
  7. 7. 応招義務
第2章 外国人患者の円滑な受入れのための体制整備
  1. 8. 感染症対策
  2. 9. 「外国人患者の受入れに関する体制整備方針」の決定
  3. 10. 医療費の設定
  4. 11. 医療費概算の事前提示
  5. 12. キャッシュレス対応
  6. 13. 通訳体制の整備
  7. 14. 院内文章の多言語化
  8. 15. マニュアルの整備
  9. 16. 院内環境の整備
  10. 17. 宗教・習慣上の対応
  11. 18. 外部機関との連携・協力
  12. 19. 研修
  13. 20. 外国人患者受入れ医療コーディネーター/担当者・部署の設置
  14. 21. 情報提供
  15. 22. 医療紛争
第3章 場面別対応
  1. 23. 受付の場面
  2. 24. 検査・診察・治療の場面
  3. 25. 入院・退院の場面
  4. 26. 診断書の作成・交付
  5. 27. 医療費の請求・支払い
  6. 28. 処方箋の発行

翻訳ツールを利用する場合は日常会話に限定を

マニュアルは平成30年度厚生労働省政策科学推進研究事業「外国人患者の受入環境整備に関する研究」研究班が作成したものだが、作成の過程で検討会に報告し、そこでの意見などを取り入れて加筆・修正し、最終的に同検討会の了承を得た。

検討会では、政府の方針も踏まえて、①医療機関の整備方針、②医療機関向けマニュアル、都道府県向けマニュアル、③自由診療における診療価格、④医療通訳者の養成・確保・配置、⑤医療通訳・ICT(情報通信技術)ツールの役割分担、⑥医療コーディネーター、などについて検討した。それらの多くはマニュアルにおいて項目が立てられ、次のような説明がなされている。

医療機関の整備方針に関しては、外国人が安全かつ安心して必要な医療サービスを利用できるよう、政府の健康・医療戦略推進本部の「訪日外国人に対する適切な医療等の確保に関するワーキンググループ」がまとめた「訪日外国人に対する適切な医療等の確保に向けた総合対策」に基づいて、関係府省庁が連携して取り組みを進めている。

医療通訳者に関しては、厚労省が医療通訳育成カリキュラム基準・テキストを作成している。また、厚生労働科学研究「医療通訳認証の実用化に関する研究」を踏まえて、医療通訳者に関連する団体によって認定制度が施行される方向にある。

ICTツールに関しては、インターネットの翻訳サイトや翻訳機器等の翻訳ツールを使用して診療を行った場合には誤訳があっても確認するすべがないため、診療上のトラブルにつながるリスクがある、と指摘。翻訳ツールを利用する場合には、日常会話に使用を限定することなどを推奨している。

外国人患者受入れ医療コーディネーターとは、外国人患者が医療機関を訪れた際、一連の手続きをサポートしたり、他の医療機関を紹介したりするなど潤滑油のような役割を担う者である。また、厚労省では外国人患者受入れ医療コーディネーターの育成に向けた研修等に取り組もうとしている。

自由診療としての医療費の合理的設定方法は研究中

外国人観光客向けの医療は自由診療となるが、通訳などのサービスを上乗せした価格の合理的な設定方法については検討会でもまだ研究の途上である。そのため、マニュアルでの「医療費の設定」の項目は「近日中に掲載されます」と記載されている。

その自由診療について、一般の医療法人とは異なり社会医療法人などでは、税制優遇措置を受けることから公的な運営が求められているため、訪日外国人の診療(自由診療)においても社会保険診療報酬と同一の基準(1点10円)で請求しなければならない。ただし、それはあくまでも診療の部分についての規定であり、例えば日本語を理解できない患者に対する通訳料、外国人患者が自国の保険請求に使う診断書の翻訳料などの費用については、社会医療法人などにおいても請求することが可能である。それに関して検討会で質問が出ていることから、厚労省は2019年3月28日、都道府県に対して「社会医療法人等における訪日外国人診療に際しての経費の請求について」の通知を発出して外国人患者に請求できる経費等について明らかにしている。

医療費に関するトラブルなどを防ぐために、医療費の概算を事前に提示することも重要である。それについて、マニュアルでは、まずは自院で医療費の概算をどのように算出するのか、基本的な算定方法や提示方法を決めておくことを推奨している。一つの事例として、「同一疾患の日本人患者5人の医療費の平均値に、合併症等が起こった場合に備えて30%分を上乗せする」と入院患者の医療費概算を算定している総合病院の例を紹介している。また、外国人旅行者は支払いに十分な現金を持ち合わせていないことも考えられることからキャッシュレス決済の体制を整備するとともに、支払い機能や上限利用額などへの対応も考慮する必要がある、と指摘している。

なお、マニュアルについては次年度以降、改訂版が出される見込みである。