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保健・医療分野でソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)に一定の成果
神戸市でのSIBを活用した糖尿病性腎症等重症化予防の結果まとまる 2020.11.01地域共生社会

政府は近年、成果連動型民間委託契約方式(PFS:Pay For Success)による事業(PFS事業)を推進しているが、その一類型であるソーシャル・インパクト・ボンド(SIB:Social Impact Bond)の保健・医療分野への応用が始まっていて、成果も出始めている。経済産業省と神戸市が令和2年10月9日に公表した「神戸市におけるSIBを活用した未受診もしくは治療中断中の糖尿病等罹患者に対する糖尿病性腎症等重症化予防のための受診勧奨・保健指導事業 最終評価結果を踏まえた事業総括」(以下、総括レポート)には、一定の成果が記されている。

ポイント

  • SIBでは報酬を成果連動型として、民間の活力と資金を活用
  • 自治体から事業を委託された民間事業者は金融機関等から資金調達
  • SIB方式による実際の事業は社会性のあるものが中心

政府が成果連動型民間委託契約方式を推進

政府は近年、PFSによる事業を推進している。これは、より良いサービスの提供に対し、より高い支払いが行われることで、民間の創意工夫の発揮や、成果の見込める新たなサービスの試行、既存サービスの改善、優良な事業者の成長促進などの効果が期待できるからである。例えば、令和2年7月17日に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2020」(骨太方針2020)では「社会的連帯や支え合いの醸成」という項目において、PFSに関して「健康、再犯防止、就労支援等の社会的事業において、成果連動型民間委託契約方式などの官民連携を進める。その際、民間資金を呼び込むSIBの積極的活用を図る」としている。

PFSやSIBについて、政府/内閣府では次のように定義している。

PFSとは、

  1. ・地方公共団体等が、民間事業者に委託等して実施させる事業のうち、
  2. ・その事業により解決を目指す「行政課題」に対応した「成果指標」が設定され、
  3. ・地方公共団体等が当該行政課題の解決のためにその事業を民間事業者に委託等した際に支払う額等が、当該成果指標の改善状況に連動する事業
  4. ・PFSの一類型として、SIBがある。これは、PFSによる事業を受託した民間事業者が、当該事業に係る資金調達を金融機関等の資金提供者から行い、その返済等を成果に連動した地方公共団体からの支払額等に応じて行うものである。

PFSのスキームでは、サービス提供者(民間事業者)に対する報酬(委託料)は成果払いの形をとるため、事業の途中で資金が不足する恐れもある。そこで、行政側あるいは第三者による評価、償還が行われるまでの事業資金は、別途、金融機関等の資金提供者から調達するという仕組みにしているのが、SIBである。また、資金提供者は、その成果に応じて利益を得ることができる。このように、行政、サービス提供者、資金提供者それぞれにおいてメリットのあるものとなっているが、SIBのS(ソーシャル)が意味するように、実際の事業としては社会性のあるものが中心となる。

厚労省がPFSのモデル事業を実施

厚労省はこのほど、地方自治体向けに、「保健福祉分野における民間活力を活用した社会的事業の開発・普及のための環境整備事業結果資料」として、「『成果連動型民間委託契約方式(Pay For Success:PFS)モデル事業』の取り組み事例」(以下、「取り組み事例」)をまとめた。

それによると、PFSの活用により効果が期待される場面として、①事業の効果的・効率的な実施を求めたい場合、②民間事業者の活用により事業成果の改善が期待できる場合、③新たな課題の解決に取り組みたい場合――がある。

また、「取り組み事例」では、これまで厚労省が取り組んできたモデル事業として、医療関係では次のようなものを紹介している(括弧内は自治体)。

  1. ・薬剤師等の指導による糖尿病重症化予防(東京都多摩市)
  2. ・ナッジ理論およびSMS(ショートメッセージ)を活用した大腸がん検診の受診勧奨(沖縄県浦添市)
  3. ・多剤投薬者等への服薬見直しの勧奨による健康増進と医療費適正化(大分県別府市、中津市、豊後大野市)
  4. ・レセプトデータ等を活用した受診勧奨による糖尿病重症化予防(奈良県天理市)

医療・健康分野ではすでに多数の事業が始まっている

 内閣府では「成果連動型民間委託契約方式(PFS:Pay For Success)ポータルサイト」(https://www8.cao.go.jp/pfs/index.html)を開設し、これまでに把握したPFS事業事例の一部を掲載している。それらのうち医療・健康分野のPFS事業(厚労省の事業以外も含む)は下表(表1)のとおりである。

表1 内閣府で把握した医療・健康分野のPFS事業事例の一部

団体名 事業名称 契約金額等
八王子市 大腸がん検診・精密検査受診率向上事業 9,762千円
神戸市 糖尿病性腎症等重症化予防事業 34,063千円
伊那市ほか 健康寿命延伸のための成果報酬型健康増進プログラム 成果目標を達成した人数×70千円(税抜き)
広島県、竹原市、尾道市、福山市、府中市、三次市、庄原市 ソーシャルインパクトボンド(SIB)の手法を用いた新たながん検診の個別受診勧奨業務 22,294千円
大分県、別府市、中津市、豊後大野市 服薬指導 8,794千円
岡山市 SIBを活用した健康ポイント事業(愛称:おかやまケンコー大作戦) 370,388千円
多摩市 多摩市国民健康保険糖尿病重症化予防事業 12,550千円
【第1期】
川西市、見附市、白子町
【第2期】
宇部市、遠野市、八幡市、指宿市、美里町
飛び地自治体連携型大規模ヘルスケアプロジェクト 非公表
福岡市 国民健康保険適正服薬推進事業 57,600千円
浦添市 大腸がん検診受診勧奨PFS事業 9,500千円
埼玉県 がん検診成果連動型事業所インセンティブ事業 105,599千円
鎌倉市 鎌倉市生活保護被保護者健康管理支援業務 7,082千円
山梨県 やまなしデータdeヘルス事業 141,000千円
豊中市 豊中市在住・在勤の喫煙者に対する禁煙支援事業 61,000千円
横浜市 産婦人科医・助産師・小児科医による遠隔健康医療相談サービス事業 5,000千円
  1. 出典:5,000千円内閣府「成果連動型民間委託契約方式(PFS:Pay For Success)ポータルサイト」
  2. 注 :事業開始年度は平成29年度以降。「PFS事業」としての事例であり、SIBとは限らない

神戸でのSIBを活用した糖尿病性腎症等重症化予防事業の成果まとまる

日本初の本格的なSIBは、経済産業省の平成28年度健康寿命延伸産業創出推進事業の一環として神戸市が実施した「SIBを活用した糖尿病性腎症等重症化予防事業」(以下、重症化予防事業)であるとされていて、これは表1にも記載されている。重症化予防事業は令和元年度で終了し、経済産業省は令和2年10月9日、総括レポートを公表した。また、神戸市も同日、最終評価結果を公表している。

重症化予防事業のスキームの概要は次のとおりである。

神戸市は、D社に業務を委託する。同社が、糖尿病性腎症のハイリスクの者などに対して、サービスを提供するとともに、M研究所に第三者評価機関としての評価業務を委託した。

民間資金活用には信託手法を用い、D社と信託銀行が信託契約を結んだ。投資家等は当該信託銀行から信託受益権を購入する形でD社に資金提供を行った。

神戸市は、D社のサービス提供完了時に評価結果に応じて当該信託銀行に委託料(固定、成果連動型)を支払う。

重症化予防事業の対象は、国民健康保険被保険者のうち特定健診において糖尿病もしくは糖尿病性腎症のハイリスクに該当し、かつ医療機関を未受診または治療中断中で、保健指導プログラム(以下、プログラム)へ参加することの同意が得られた者109人。平成29年8月から半年間、プログラムを実施した。

成果指標は、プログラム修了率(目標値80%)、生活習慣改善率(同75%)、腎機能低下抑制率(同80%)の3つで、第三者評価機関であるM研究所がその評価を行った。

生活習慣改善率は95.0%で目標値を上回る

実際の評価は、プログラム開始後に他の傷病を有することが判明した4人を除き、105人を対象とした。

成果指標のプログラム修了率は100%で、目標値(80%)を上回った。

生活習慣改善率は95.0%で、これも目標値(75.0%)を上回った。

腎機能低下抑制率は、生活習慣が改善した者(介入群)のうちプログラム実施の結果、腎機能(eGFR値)の低下が抑制されたと判断される者の割合である。プログラムを実施しない場合の自然なeGFR値の(経年的な)変化を把握し、これを基準とするので、健診データで得られる各種背景情報(年齢、性別、血圧、HbA1c、eGFRなど)から介入群と似た集団を選び出して対照群(159人)とした。この対照群のeGFRの低下に基づいて、介入群の各人のeGFRの予測値を算出した。その予測値より低下率が低ければ、その者を腎機能低下抑制者とした。その結果、eGFR値の低下が抑制されたと判定されたのは介入群76人中25人(腎機能低下抑制率32.9%)で、目標値(80%)を下回った。

成果の可視化を図れることが期待される

それらの結果を踏まえて、総括レポートでは「まとめ」において、「プログラムに一定の成果があることが示された」と評価するとともに、重症化予防事業の質の向上のみならず、成果の可視化に向けた期待が述べられている。

なお、PFSの概念にまで広げれば、事業の内容はさらに広がり、例えば厚労省の「取り組み事例」では、介護保険の要支援認定者の生活自立支援、フリースクール事業による不登校の子どもの自立支援、引きこもりの者へのアウトリーチなどが挙げられており、PFSあるいはSIBのさまざまな分野への応用が期待される。