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広島県尾道市 体制構築 薬剤師会/歯科医師会の参画ー薬剤師会の参画

<尾道市のポイント>

  • 一般社団法人 尾道薬剤師会として尾道方式における退院前ケアカンファレンス、ケアカンファレンスに参加しています。
  • 保険薬局薬剤師の在宅医療への参加を促す取り組みに加え、他の専門職や住民への啓発活動にも取り組んでいます。

課題:保険薬局薬剤師の在宅医療への参加を促進する必要がありました。

一般社団法人 尾道薬剤師会は地域包括ケアシステム構築にどのように関わるのかを検 討しました。在宅医療における薬剤管理が重要であることから、保険薬局薬剤師による在 宅訪問を実現できるように取り組む必要がありました。

解決:退院前ケアカンファレンスに参加することを皮切りに、保険薬局薬剤師の在宅医療におけるスキルアップに取り組む他、他の専門職や住民への啓発活動を行っています。

片山医院 片山 壽 院長
片山医院 片山 壽 院長

尾道市には保険薬局が84薬局あり、そのうち54薬局が公益財団法人 広島県薬剤師会に対して在宅訪問が可能だと答えています。しかし、そこに至るまでに尾道薬剤師会はさまざまな取り組みを実施して成果を上げてきました。

一般社団法人尾道市医師会は高齢化が進む尾道市で高齢者地域医療をどのように展開していくのかを検討し、在宅主治医機能を中心に退院時における病院、診療所や在宅でのケアカンファレンスなどによる多職種連携を推進する地域医療連携システムである尾道方式(尾道市医師会方式)を構築しました。元・同医師会会長で片山医院の片山壽院長は、「尾道方式はどこかをモデルにしたのではなくオリジナルのシステムです。診療所医師をはじめ医療・介護の多職種・多施設、地域の人を支える団体や専門職など、多くの人が関わってつくり上げました」と話します。この尾道方式で最も特徴的なものは多職種が一堂に会するケアカンファレンスです。ケアカンファレンス、退院前ケアカンファレンスは高齢者医療・介護の長期継続ケアを実現する手法であり、急性期・回復期・生活期それぞれのケアの分担を多職種協働によって可能としています。

片山医院院長室での在宅医療カンファレンス
片山医院院長室での在宅医療カンファレンス
尾道市立市民病院 薬剤部 神原 弘恵 薬剤師
尾道市立市民病院 薬剤部 神原 弘恵 薬剤師

尾道薬剤師会は尾道市の急性期病院における退院前ケアカンファレンスに参加し始めたのは2010年からです。その一つが尾道市立総合医療センター 尾道市立市民病院(以下、尾道市立市民病院)の退院前ケアカンファレンスです。同院では退院前カンファレンスを2003年に開始した当初は、病院側主治医、看護師、地域医療連携室スタッフ、在宅主治医、ケアマネジャー、訪問看護師、訪問介護士などで構成されていました。その後、同院の薬剤部は退院前ケアカンファレンスをチーム医療の延長と考え、2006年から参加し始めました。同院薬剤部の神原弘恵薬剤師は「当初は薬剤師として15分という短時間のカンファレンスに何を伝えるべきか戸惑いました。そこで、静脈栄養や経腸栄養をされている方の退院後、その管理における注意事項をはじめ、服薬管理が難しい方への対応方法などをお伝えすることで、薬剤師としてカンファレンスに出席する意義が見えてきました。また、参加することで多くを勉強しました」と話します。例えば、在宅経腸栄養療法を継続する場合、患者さん・家族への指導に関し、栄養管理ファイルを作成して次のような項目について伝えています。

  • 経腸栄養剤の選択および説明
  • 栄養剤の調製法、保存方法
  • 栄養剤の注入方法、注入速度
  • 薬の注入方法(簡易懸濁法)
  • 注入後のチューブ、ボトル類の洗浄・消毒法
  • 合併症および対処法

こうした説明は保険薬局薬剤師にとって非常に参考になる情報であり、退院前ケアカンファレンスに参加する意識を高めることにつながっています。病院薬剤師にとっても退院後の患者さんをフォローすることにもつながり、病院から在宅まで一貫した薬物療法ができる意味は大きなものとなっています。

ファーマシィ薬局ふれあい 小川 由美 薬局長
ファーマシィ薬局ふれあい 小川 由美 薬局長
ファーマシィ薬局ふれあい 杉之原 佳江 薬剤師
ファーマシィ薬局ふれあい 杉之原 佳江 薬剤師

以来、多くの保険薬局薬剤師が参加するようになりましたが、さらに参加者を増やすため、2018年10月から尾道市立市民病院と尾道薬剤師会は合同で薬薬連携協議会を2カ月に1回開催し、退院前ケアカンファレンスの参加率向上やお薬手帳の記載内容などについて協議を行っています。また、ID-Linkを活用するために2014年頃には、同薬剤師会と同院薬剤部を対象にした天かけるID-Link(図1 PDF)の講習会が開催されました。尾道地域医療・介護連携事業である天かけるID-Linkは、同意を得た患者さんを対象に中核病院、診療所、保険薬局、高齢者介護施設等の間で、処方、注射、検査値、画像、退院時サマリー、アレルギー情報などを閲覧できるシステムです。

一方、保険薬局側では、2005年頃より株式会社ファーマシィファーマシィ薬局ふれあいの小川由美薬局長が在宅ケアカンファレンスに参加するようになりました。ケアカンファレンスに参加する前は他職種との交流はほぼなく、戸惑うことが多かったそうです。ケアカンファレンスに参加する前から在宅業務は行っていたため、在宅医療の状況はある程度理解し、保険薬局薬剤師として行うべきことも把握していましたが、他の職種が具体的にどのようなことをしているのかは全く知りませんでした。小川薬局長は「お互いに理解が深まると、訪問時間を他の職種に合わせて情報交換を行ったり、独居の方の場合は逆に時間を変えることで訪問時間増加につなげるなどの工夫ができています」と話します。独居高齢者が増えてきているため、あらかじめ入手できる情報にも限りがあり、どこまで踏み込んでよいのか、どこまで関わったらよいのか常に悩まされることが多いそうですが、ケアマネジャーなど多職種と情報交換をしながら模索の日々が続いているといいます。株式会社ファーマシィの薬剤師の中には、患者さんが亡くなった後のカンファレンスにも出席し、家族との悲しみの共有を経験して薬剤師としての在宅業務の意義をさらに深めている人もいます。

尾道薬剤師会がケアカンファレンス、退院前ケアカンファレンスに積極的に参加する姿勢を持ったことにより、保険薬局薬剤師の参加は大きく進展しました。

2009年からスタートしたおのみち在宅支援講習会はVoL.Ⅰ~Ⅳまで行われ、各回6回で構成されています。2016年に行われたVoL.Ⅳの1回目は、JA尾道総合病院がん診療支援チームの医師から「在宅緩和医療で保険薬局に期待すること」という講演やオピオイド製剤の特徴や使い方の話などがありました。さらに、尾道市歯科医師会・尾道薬剤師会合同研修会を年1回開催するなど積極的に取り組み、保険薬局薬剤師を支援しています。

尾道薬剤師会は保険薬局薬剤師を対象とした取り組みのみならず、尾道市介護支援専門員連絡協議会研修でケアマネジャーを対象とした講演とグループワークを行い、保険薬局薬剤師とケアマネジャーとのコミュニケーションを深める機会を得ました。2012年には社会福祉法人 尾道市社会福祉協議会からの依頼で地域の公民館において、住民を対象に「薬の飲み方と保管方法」をテーマに話をしました。おのみち市民健康祭りにも参加し、2016年の祭りでは尾道薬剤師会ブースに検体測定室(随時血糖測定、HbA1c測定)、薬と健康相談、薬草の展示と解説、紫蘇ジュースの試飲、熊本地震災害時薬剤師活動の報告(パネル展示)などをそろえ、検体測定室では検査の結果を伝え、気になる人には相談員として参加していた内科医や眼科医、管理栄養士につなぎました。

このように、尾道薬剤師会は尾道方式への参加はもちろん、地域の人たちの健康を支える活動を通して地域包括ケアシステムに参画しています。

取材協力:片山医院 片山 壽院長、株式会社ファーマシィ ファーマシィ薬局ふれあい 小川 由美薬局長、杉之原 佳江薬剤師、尾道市立総合医療センター 尾道市立市民病院 薬剤部 神原 弘恵薬剤師
[出典]図1:尾道市立総合医療センター 尾道市立市民病院 薬剤師 神原 弘恵