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広島県尾道市 地域包括ケア構築参画環境整備 歯科医師の参画環境整備

<尾道市のポイント>

  • 医科歯科連携を強化し、訪問歯科検診を実施しました。
  • ケアカンファレンスに参加し、多職種連携と歯科衛生士のスキルアップを図っています。

課題:在宅医療で需要が増える訪問歯科診療を拡大することが課題でした。

一般社団法人 尾道市歯科医師会は2020年に創立100周年を迎えます。現在、会員は57人で、約半数が訪問歯科診療協力医、在宅訪問口腔ケア協力医となっています。その現状は自分の歯科診療所に通院していた患者さんに対する訪問歯科診療が中心となっていますが、ここまでに至るには、医科歯科連携を進めるとともに、歯科衛生士のスキルを向上させることが課題でした。

解決:医科歯科連携を強化し、尾道市医師会オリジナルのケアカンファレンスに参加して多職種連携と歯科衛生士のスキルアップを図りました。

片山医院 片山 壽 院長
片山医院 片山 壽 院長

尾道市の場合、医師も歯科医師も2代目、3代目の方が多く、高校も同窓であることも多いため、歯科医師同士あるいは歯科医師と医師も顔なじみである環境にありました。また、医師会は廿日会(はつかかい)、歯科医師会は十日会というインフォーマルな会を互いに毎月開催しており、折があれば相互にその会に参加するという関係性が過去から築き上げられていました。そのような中、一般社団法人 尾道市医師会は1991年に尾道市医師会救急蘇生委員会を設立し、急性期病院の救命救急機能を最大限に生かして高いレベルでの救急医療を実現するため、診療所と急性期病院による連携型救命救急システム(図1 PDF)を構築しました。当時尾道市医師会の救急担当理事であった片山医院の片山壽院長は、医師会を代表して急性期病院の外科部長や麻酔科部長と膝を詰めて話し合い、システムの必要性を訴求していくと病院側の医師も理解を示してくれました。その後、消防署、警察署、海上保安部、保健所、尾道市なども協議に加わり、実際に同システムが稼働し、その成果を高く評価した尾道市歯科医師会も麻酔事故などが起こりうる環境にいるためその必要性を感じ、1992年から同委員会に参画しました。片山院長は「旧・尾道市内の全歯科診療所医師と近隣診療所医師の134人で医科歯科連携連絡協議会を開催し、同歯科医師会は救急蘇生委員会に正式にメンバーとして参加しました」と振り返ります。これを機に強固な医科歯科連携が築かれていきました。現在でも年に1回の合同懇親会・勉強会が行われ、本音で話ができる関係にあります。

片山院長は「がんの在宅緩和ケアで疼痛管理によって痛みがなくなった後、患者さんのQOLを高めるのは食事を美味しく食べられるようになることです。そのためには、口腔ケアや摂食嚥下リハビリテーションが大切となります」と話し、訪問歯科診療を拡大していくことが重要だと指摘します。

黒瀬歯科医院 黒瀬 濟 院長
黒瀬歯科医院 黒瀬 濟 院長

同歯科医師会の理事でもある黒瀬歯科医院の黒瀬濟院長は、「1990年に開業して間もなく近隣の内科診療所の先生からの依頼で一緒に患者さん宅を訪問して歯科診療を行いました。患者さんとご家族からは大変感謝されると同時に驚かれました」と振り返ります。当時はまだ、訪問歯科診療が一般的ではなかったからです。その後も在宅診療を行っている医師からの要請があれば訪問し、う歯の治療、入れ歯調整、口腔ケアなどを続けました。

現在、同歯科医師会は訪問歯科診療と歯科衛生士による訪問口腔ケアを実施していますが、事業として訪問歯科診療を実施する前の1992年に、80歳で20本の歯を残す取り組みである「8020(ハチマルニイマル)運動」の歯科実態調査を旧・尾道市で行った結果、歯の残っている人の方がADLは高く、無歯顎の人は何らかの障害を起こしていることが分かりました。同歯科医師会は1997年に行政と協働で、寝たきりの高齢者を対象としたはつらつ訪問歯科検診を実施しました。往診用の歯科器材は行政の補助で導入しました。

こうした機運の高まりの中、在宅主治医を中心に多職種による尾道市医師会オリジナルのケアカンファレンスが1999年からスタートし、歯科診療所医師も参加しました。黒瀬院長は「模擬ケアカンファレンスが2回行われ、延べ235人の多職種が参加しました。その中で歯科診療所医師は12人でした。患者さんのアセスメントをとるという初めての体験は新鮮でしたね。ただ、口の中までのアセスメントがなく、その必要性をアピールしました」と振り返ります。この言葉から分かるように、多職種が口腔にまで意識が及ばないという実態がありましたが、その後、ケアカンファレンスを数多く行っていく中で、歯科診療や口腔ケアの重要性は浸透していきました。

一方、尾道市歯科医師会も在宅診療については積極的な立場をとり、現在在宅協力歯科医師としての登録は歯科医師会の半数に及ぶに至りました。在宅診療を受ける高齢者が増加するのに伴い口腔ケアに対するニーズは高まり歯科診療所の訪問歯科診療を拡大しつつも歯科医師のみで実施していくには無理があるため、口腔ケアを担う歯科衛生士のスキルアップを図ることが大きな課題でした。黒瀬院長はケアカンファレンスに歯科衛生士を必ず帯同しました。それによって次のような成果が上がっています。

対外的に歯科衛生士という職業が認知され始めた。

歯科衛生士自身に自覚と自信がつき始めた。

口腔ケアなら歯科衛生士に任せて安心という環境ができつつある。

専門的口腔ケアの考え方から発展して摂食嚥下リハビリテーションの一翼を担うようになり、口腔リハビリテーションを行うことができる歯科衛生士に進化し始めた。

口腔ケアをきちんと行える歯科衛生士の存在が、歯科診療所医師の訪問歯科診療を支えており、そのスキルアップをたえず図ることが重要となっています。また、歯科診療所での常勤勤務が子育てなどで難しくなった歯科衛生士が歯みんぐと呼ばれる在宅歯科衛生士の会をつくり、訪問口腔ケアを手伝うなど訪問歯科診療に貢献しています。

取材協力:片山医院 片山 壽院長、黒瀬歯科医院 黒瀬 濟院長
[出典]図1:一般社団法人 尾道市医師会