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広島県尾道市

広島県尾道市

主治医機能を中核とした尾道方式で医療・介護・福祉連携を推進する地域包括ケアシステムを構築しています。

尾道市の地域包括ケアシステムには3つのモデルがあります。

尾道市は2005年に御調町、向島町と合併し、さらに2006年に因島市、瀬戸田町を編入して現在の市となりました。旧・尾道市、旧・御調町、旧・因島市ではそれぞれ独自に医療・介護の提供体制を築いており、現在は、一般社団法人 尾道市医師会を中心とした尾道方式(尾道市医師会方式)、尾道市立総合医療センター 公立みつぎ総合病院(以下、公立みつぎ総合病院)を中心とした地域包括ケアシステム、一般社団法人 因島医師会を中心とした因島医師会方式という3つの地域包括ケアシステムが進められています。

そのうちの一つで、医療・介護・福祉・生活をつなぐ尾道方式について、その歴史的変遷や活動内容などを説明していきます。

尾道市医師会救急蘇生委員会の設置が尾道方式を構築するスタートでした。

尾道市全体の人口は2018年12月31日現在、13万7,627人(男性6万6,444人、女性7万1,183人)、65歳以上の高齢化率は35.4%です。医療機関は3つの急性期病院とその他に6つの病院、85の診療所があります。

片山医院 片山 壽 院長
片山医院 片山 壽 院長
片山医院 院長室での在宅医療カンファレンス
片山医院 院長室での在宅医療カンファレンス
JA 尾道総合病院 在宅医療復帰退院前カンファレンス
JA 尾道総合病院 在宅医療復帰退院前カンファレンス

高齢化が進む尾道市で高齢者地域医療をどのように展開していくのかを検討してきたのが一般社団法人 尾道市医師会でした。その取り組みは尾道方式と呼ばれるもので、在宅主治医機能を中心に退院時における病院、診療所や在宅でのケアカンファレンスなどによる多職種連携を推進する地域医療連携システムです。尾道方式完成に至るまでのさまざまな布石を論理的に位置付けてきた元・同医師会会長で片山医院の片山壽院長は、「尾道方式はどこかをモデルにしたのではなくオリジナルのシステムです。診療所医師をはじめ医療・介護の多職種・多施設、地域の人を支える団体や専門職など、多くの人が関わってつくり上げました」と話します。

尾道市の診療所医師には大きな特徴があります。それは2代目、3代目が多く、皆が旧知の間柄であり、地域の多職種とも顔なじみであるということです。こうした状況にあることで、さまざまな取り組みがスピーディーかつスムーズに進んでいきました。現在、その関係性を継続し、より密で気軽に相談できる環境づくりをめざし診療所医師、病院医師による廿日会(はつかかい)という情報交換と懇親の会が毎月行われています。

尾道方式の起源ともいえるのが、1991年に設立した尾道市医師会救急蘇生委員会です。急性期病院の救命救急機能を最大限に生かして高いレベルでの救急医療を実現するため、診療所と急性期病院による連携型救命救急システム(図1 PDF)を構築しました。当時尾道市医師会の救急担当理事であった片山医院片山壽院長は、医師会を代表して急性期病院の外科部長や麻酔科部長とそれこそ膝を詰めて話し合いを行い、システムの必要性を訴求していくと病院側の医師も理解を示してくれました。その後、消防署、警察署、海上保安部、保健所、尾道市なども協議に加わり、実際に同システムが稼働し、その成果を高く評価した一般社団法人 尾道市歯科医師会も1992年から同委員会に参画しました。これにより、例えば歯科における麻酔によるショックが起きた場合、ケースによっては急性期病院の麻酔科医が歯科診療所まで直接診療に訪れることさえも行われる仕組みを確立しました。診療所と急性期病院の連携が双方の信頼関係のもと飛躍的に発展した結果です。救急機能を担う広島県厚生農業協同組合連合会 尾道総合病院(以下、JA尾道総合病院)、尾道市立総合医療センター 尾道市立市民病院(以下、尾道市立市民病院)、公立みつぎ総合病院は搬送のルールなどもエリアを見据えて詰めていきました。

同システムが普及した1994年、尾道市医師会は高齢者医療ケアシステムのコンセプト(図2 PDF)を策定しました。このコンセプトには主治医機能の拡充による在宅医療のシステム化、包括的ケアシステムの確立が盛り込まれました。同時に、尾道市医師会主治医機能3原則(図3 PDF)をまとめ、これがその後の在宅主治医機能につながっています。同時に、地域一体型継続研修システムとして高齢者医療福祉問題講演会を設置して、医療・介護スタッフの教育・研修に力を入れることになりました(図4 PDF)

一般社団法人 尾道市医師会
訪問看護ステーション管理者 林 身江子氏
一般社団法人 尾道市医師会
訪問看護ステーション管理者 林 身江子氏

在宅医療が主治医機能で順調に動き出した状況に合わせ、在宅医療支援機能を進めるため尾道市医師会訪問看護ステーションを1995年に設置しました。当時の状況について同ステーションの管理者である林身江子氏は「看護師1人、准看護師5人、事務員1人でスタートしました」と話します。1997年には在宅介護支援センターを併設する認知症専門病床30床を含む介護老人保健施設(80床)を設立し、急速に進む高齢化、それに伴う認知症の増加への対策として先手が打たれました。その後、1998年に24時間ヘルパーステーション開設、尾道市医師会介護保険プロジェクトチーム地域ケア研究会設置、1999年に尾道市医師会ケアマネジメントセンター(各種スタッフ研修とケアマネジャー教育)開設、尾道市医師会在宅看護研修プログラム(急性期病院看護部による訪問看護師への研修)開始など急速に取り組みが進み各施設のスタッフが在宅医療を不安なく進められる仕組みが確立していきました。

尾道市医師会オリジナルのケアカンファレンスを実施して多職種連携・協働を実現しました。

尾道方式で最も特徴的なものは多職種が一堂に会するケアカンファレンスです。高齢患者の生活機能障害を的確に評価し、その軽減と予防に重点を置く手法である高齢者総合評価(CGA;Comprehensive Geriatric Assessment)(図5 PDF)をベースとした尾道市医師会オリジナルのカンファレンスで、在宅主治医を中核として患者さんの在宅療養を支援するプログラムです。これは高齢者医療・介護の長期継続ケアを実現する手法であり、急性期・回復期・生活期それぞれのケアの分担を多職種協働によって可能としています。ちなみに、同会の介護老人保健施設では開設当初からCGAを標準化するためにMDS-RAPs(Minimum Data Set-Resident Assessment Protocols)(図6 PDF)の350項目(既往歴、現疾患、機能状態など)のアセスメントを行いました。

黒瀬歯科医院 黒瀬 濟 院長
黒瀬歯科医院 黒瀬 濟 院長

患者さんと家族の参加が不可欠である尾道方式のケアカンファレンスは概ね15分間で実施されます。もちろん、その患者さんに関わる医療・介護スタッフは事前に患者情報やケアプランを整理・準備して参加者と共有しておきます。15分間のカンファレンスでそれらを全員で確認・共有して終了となりますが、その前後で必要に応じて参加者が個別に打ち合わせを行うこともあり、他の職種との相互情報交換の機会ともなっています。1990年に黒瀬歯科医院を開業してすぐに訪問歯科診療を開始した黒瀬濟院長は、「ケアカンファレンスがスタートしたときから、歯科衛生士を常に帯同して参加しました。訪問歯科診療で重要な役割を果たす歯科衛生士について多職種に知ってもらえるよい機会となっています」と話します。

片山院長は「ケアカンファレンスを周知するに当たり、1999年に6時間の模擬ケアカンファレンスを2回行いました」と振り返ります。具体的な症例を用いた模擬ケアカンファレンスは、同医師会関係者だけではなく、歯科医師や福祉職などあらゆる領域のスタッフが参加しました。第1回が107人、第2回が128人と大人数の参加があり、関心は非常に高く、ケアカンファレンスを15分で行う意義の理解は進みました。急性期病院の部長クラスの医師も参加しており、その後の退院前ケアカンファレンスの実施にもつながりました。

現在では、主治医とその診療所の看護師、ケアマネジャー、訪問看護師、介護士、保険薬局薬剤師、リハビリテーションスタッフ、栄養士に加え、必要に応じて歯科医、歯科衛生士、泌尿器科医や耳鼻科医なども参加し、万全な在宅医療体制を構築しています。

在宅緩和ケアと長期継続リハビリテーションが重要なテーマとなりました。

ファーマシィ薬局ふれあい 小川 由美 薬局長
ファーマシィ薬局ふれあい 小川 由美 薬局長
ファーマシィ薬局ふれあい 杉之原 佳江 薬剤師
ファーマシィ薬局ふれあい 杉之原 佳江 薬剤師
尾道市立病院 薬剤部 神原 弘恵 薬剤師
尾道市立病院 薬剤部 神原 弘恵 薬剤師

2000年に介護保険制度がスタートし、高齢者医療・介護サービスは進展していきました。尾道市医師会は、2001年に長期支援ケアマネジメントプログラム(図7 PDF)を考案しました。そして、がん患者の終生期をどのように支援していくかが大きな課題となり、2002年に開催された講演会で座長を務めた片山院長は「尾道市医師会は、がんの痛みのない医療圏をめざします」と宣言し、緩和ケアのシステム化に着手しました。がんは急性期病院での治療および緩和ケアが重要で、地域医療連携システムがなければならないとし、尾道市医師会在宅緩和ケアシステムの基本理念(図8 PDF)をつくりました。2005年に同医師会の会員を対象に行った在宅緩和ケア達成度調査では、主治医機能を標榜する67医療機関のうち54医療機関(74.3%)が在宅緩和ケアを行っていることが分かりました。がん患者の緩和ケアの例を見ると、退院前ケアカンファレンスに参加したのは、患者さんと家族、在宅主治医、病院主治医、病院の緩和ケア担当医師、患者宅に近い診療所の内科医、泌尿器科医、診療所看護師長、保険薬局薬剤師、訪問看護ステーションのケアマネジャーを含むスタッフ、病院の地域連携室長、病棟看護師長、緩和ケア認定看護師、病院薬剤師、訪問入浴事業者、医療機器事業者でした。まさに地域医療連携システムに則った退院前ケアカンファレンスを実施したのです。在宅緩和ケアが実施できる要因の一つに薬剤師の活躍があります。株式会社ファーマシィ ファーマシィ薬局ふれあい(以下、ファーマシィ薬局ふれあい)の小川由美薬局長と杉之原佳江薬剤師は「緩和ケアの方は状態が不安定なので、毎日薬剤師が訪問するケースもあります」と話します。また、抗がん剤を経管投与されている方に対する簡易懸濁法についてなども尾道市立市民病院の神原弘恵薬剤師によるレクチャーで広く尾道市の薬剤師に理解され、普及しています。その後、2007年に尾道市医師会在宅緩和ケアシステム2007として基本概念をバージョンアップしました。

在宅緩和ケアと同様に重要となるのが長期継続リハビリテーションです。尾道市医師会長期ケアマネジメントプログラムは長期継続リハビリテーションプログラムであり、在宅主治医を中心とする地域医療連携でリハビリテーションプログラムを用意し、生活期の機能改善・生活支援プログラムを実践しています。急性期・回復期・生活期でそれぞれ必要なリハビリテーションがあり、各段階に応じて後方支援病院のリハビリテーション機能を活用することで滞りのないリハビリテーションを実現しています。生活期リハビリテーションは退院前カンファレンス以降のものです。片山院長は「多職種協働のチームプログラムが中心となりますが、再発予防、合併症管理の責務も負っています」と、生活期リハビリテーションの位置付けを説明します。在宅緩和ケアにおいて疼痛緩和ができたら、次は患者さんのQOLを高める必要があります。その一つが食事を美味しく食べられるようにすることで、そのためには口腔ケア摂食嚥下リハビリテーションが必要となります。摂食嚥下機能評価、歯科医師の口腔機能評価、さらに耳鼻科医の嚥下内視鏡により、摂食嚥下リハビリテーションプログラムを作成して介護者に説明しています。

一般社団法人 尾道市歯科医師会に所属する歯科診療所の約半数が訪問歯科診療を手掛け、口腔ケアを実施しています。患者さんの口の中をきれいにするだけではなく、その方法の指導、義歯の取り扱いの指導、栄養指導などを歯科診療所医師の指導のもとに歯科衛生士が行います。黒瀬院長は「在宅での口腔ケアは歯科衛生士の役割が重要となります。当市では、「歯みんぐ」という訪問口腔ケアを専門に行う在宅歯科衛生士の会がブラッシング指導や歯の健康指導を行うなど、在宅医療の現場だけではなく地域での活動にも積極的ですね」と話します。

医療・福祉の協働は尾道方式をより強固なものにしています。

尾道市立市民病院病室で診察する片山院長
尾道市立市民病院病室で診察する片山院長

1991年の尾道市医師会救急蘇生委員会の設立によって、病院と診療所の救急医療連携が大きく進展してきましたが、2009年に岡山大学医学部から尾道市立市民病院への内科系医師の派遣が減少し、併設する夜間救急診療所の日当直体制が厳しくなりました。そこで、同医師会の内科系診療所医師が尾道市医師会救急システム検討委員会を立ち上げ、内科系の診療所医師が日直で支援することを決定しました。さらに、JA尾道総合病院の医師も尾道市立市民病院の当直を行うことになりました。片山院長は「診療所医師は自分が紹介した入院患者を訪問し、病院主治医と共同診療することも少なくありません。日直業務に携わることで同院の電子カルテの閲覧や、紹介入院患者の診療に関して電子カルテへの記載も促進されました」と話します。

ケアカンファレンスなどにより医療・介護の緊密な連携が進む尾道市では、尾道市医師会が古くから医療と福祉の連携・協働にも力を入れてきました。尾道市医師会ケアマネジメントセンターや高齢者医療福祉問題講演会などに社会福祉法人 尾道市社会福祉協議会も参加し、医療スタッフとの交流も進みました。現在、同協議会は、子育て支援事業、ふれあいサロン事業、福祉サービス利用援助事業、住民参加型ふれあいサービス事業、いきいき大学の運営、認知症高齢者見守り事業、ボランティア活動の推進、福祉総合相談事業、尾道市総合福祉センター事業、介護保険事業などを展開しています。ふれあいサロンには高齢者や障がい者などが気軽に集い、ボランティアによる介護予防や住民同士の交流などが盛んに行われています。

元民生委員・児童委員 廣保 武司氏
元民生委員・児童委員 廣保 武司氏

そして、2002年に尾道市社会福祉協議会・尾道市医師会連絡協議会(社医連協)が発足し、同協議会と同医師会のヘルパー48人に対する病棟介護実習を行いました。また、尾道市立市民病院とJA尾道総合病院の医師から在宅医療や医学的な知識の講義の他、介護保険制度についての研修も実施されました。社医連協以上に注目すべきことは、2004年に尾道市社会福祉協議会・尾道市医師会・尾道市連合民生委員・児童委員協議会連絡協議会(社医民連協)が誕生したことです。これは新・地域ケア2004と呼ばれるもので高齢者支援ケアカンファレンスを通じてケアマネジャーと民生委員・児童委員と医療系職種との協働を図り、地域における各職種の業務の位置づけを明確にして連携を行いました。その後、2007年に新・地域ケア2007にバージョンアップし、2009年には尾道警察署とも連携して新・地域ケア2009となり、その後も進化しています。介護保険制度以前から在宅福祉の担い手だった民生委員・児童委員は、独居高齢者を親身に支援する存在で、ケアカンファレンスにも参加しています。民生委員・児童委員を長年務めた廣保武司氏は「医療・介護・福祉について知識が乏しい尾道市連合民生委員・児童委員協議会の372人は、片山先生から多大な指導をしていただきました」と振り返ります。そして、民生委員・児童委員は認知症対策にも大きな役割を果たしてきました。廣保氏を含めた民生委員・児童委員は介護相談員として任命を受け施設を訪問し、入居者からサービスの実態を聞き取り、行政に橋渡しを行いました。

古くから認知症対策に取り組み、多くの職種が早期診断に関わっています。

超高齢社会の地域包括ケアシステムにおいて、認知症対策は大きな課題となっています。尾道市医師会の歴史を振り返ってみると、1990年代前半は認知症は未知の領域だったそうです。そこで、地域一体型継続研修システムとして1994年に設立した高齢者医療福祉問題講演会と在宅ケア部会に認知症研究の第一人者を講師に招き、認知症の概論を学びました。また、1997年に新設した介護老人保健施設のスタッフは、認知症専門の介護老人保健施設で在宅ケアとともに認知症ケアの研修を受けました。同医師会は会員医師の認知症への対応、知識習得に継続的に取り組み、2003年に尾道市医師会方式認知症早期診断プロジェクト(61医療機関)を立ち上げました。2005年から同プロジェクトは認知症早期診断マニュアル作成委員会をつくり、尾道市医師会方式認知症早期診断マニュアルを完成させました。片山院長は「時計描画検査(CDT)に日付などを加え、医師以外のスタッフ、ケアマネジャーや民生委員・児童委員が標準的に使えるものとして評価表も付けました」と説明します(図9 PDF)。同マニュアルは診療所看護師・受付スタッフ、診療所歯科医師、民生委員・児童委員、尾道市公衆衛生推進協議会の保健推進員などに加え、保険薬局薬剤師も活用して大きな成果を上げています。特に、民生委員・児童委員は地域の各家庭のマップを作成して地域の見守り体制づくりを行い、行政が指示する月に3回以上の独居高齢者安否確認の訪問時に認知症の可能性について把握しました。その情報をケアカンファレンスで報告し、主治医が即座に対応するという素早さを実現しました。独居高齢者の軽度認知症の早期発見に効果的な仕組みとして確立しました。

地域の各家庭のマップ
地域の各家庭のマップ

その後、2004年に厚生労働省老人保健健康増進等事業「かかりつけ医の認知症診断技術向上に関するモデル事業」を尾道市医師会は受託しました。同事業は、精神科・神経内科の専門医により、高齢社会で身近な疾患の一つとなった認知症の、①診療意義の理解、②臨床像の理解、③治療・ケアの要点、④地域連携の重要性の点から診療啓発を行うための仕組みづくりを目的としていました。同事業を進めるに当たり、同医師会では診療所医師を対象に4回の連続研修を実施し58人が参加しました。修了時には修了書と尾道市医師会認知症診断プロジェクト対応医療機関というステッカーを渡し、そのステッカーを診療所入口に貼ってもらうようにしたそうです。片山院長は「認知症は確実な治療ができることが重要で、投薬量の調節を細かく行わなければなりません。この取り組みによって、当医師会の診療所医師の認知症診断治療能力はかなり向上したと思います。認知症は治療ありきのケアが重要で、治療を行いながら生活の質の安定を計算し、それに向けた対応を行うことです。食べることのできない方をどのようにして食べられる状態にまでもっていくかを検討し、ケアを進めていくわけです。こうした治療ありきのケアは、これからもその方向は変わりません」と話します。

地域包括ケアシステムは全ての領域を含みます。
在宅医療・介護分野では看護小規模多機能型居宅介護事業所に期待が寄せられます。

有限会社ブレイクスルー 佐古田 専美 統括部長
有限会社ブレイクスルー 佐古田 専美 統括部長

現在、エンド・オブ・ライフ(End-Of-Life:EOL)ケアが注目されていますが、尾道市医師会は、2006年に終生期ケアシステム検討委員会(2008年に尾道市医師会end-of life careシステム検討委員会と改称)を設置しました。JA尾道総合病院、尾道市立市民病院、公立みつぎ総合病院の3つの急性期病院の病院長も参加する委員会で、診療所のチーム医療と急性期病院のシームレスな地域医療連携をベースに在宅でのエンド・オブ・ライフケアをめざしました。

看護小規模多機能型居宅介護施設「森のくまさん」
看護小規模多機能型居宅介護施設「森のくまさん」

地域包括ケアシステムは全ての領域をカバーするものでなければならないと考える片山院長ですが、これからの在宅医療・介護で大きな役割を果たすのが看護小規模多機能型居宅介護事業所(看多機)だと話します。尾道市には看多機が2つあります。2006年に開設された小規模多機能型居宅介護事業所(小多機)で利用者さんを支援してきた有限会社ブレイクスルーの看護師で看多機「森のくまさん」の管理者である佐古田専美統括部長は、「2017年に看多機(図10 PDF)を開設し、医療依存度の高い利用者さんを受け入れています」と話します。小多機では利用者さんの連泊が増加し、家族の依存度が高い傾向にありますが、看多機には訪問看護機能があるので重度の人や看取りの時期の人でも連泊することは少なく、在宅療養という方向性が強くなっています。開設後4年弱で76人を看取っており、大きな役割を果たしています。尾道市医師会としては、どのようながん患者さんでも在宅で受け入れられる体制をつくる必要があり、実践してきました。そこに看多機が機能することで病院、在宅、看多機による長期サイクルケアが実現しました。在宅医療・介護をさらに推進していくために看多機に寄せる期待が大きくなっています。

尾道市立大学 経済情報学部 髙間 沙織 講師
尾道市立大学 経済情報学部 髙間 沙織 講師

尾道市医師会が構築してきた地域包括システムは尾道方式を核としています。尾道方式は高齢者医療・介護にケアマネジメント、地域医療連携で対応するものです。一橋大学 大学院社会学研究科を修了後、現職に就き、尾道方式の研究にも取り組んでいる尾道市立大学経済情報学部の髙間沙織講師は、次のように話します。「尾道方式は在宅主治医とケアマネジャーが協働してトータルマネジメントする個別コーディネートと、地域の多職種でさまざまなプロジェクト(認知症早期診断プロジェクト、膵癌早期診断プロジェクトなど)を実施し、地域の多組織に向けた研修やプロジェクトなどで協働する地域コーディネートに特色があります」。尾道方式による地域包括ケアシステムは、高齢者支援を子育て支援に置き換える発想で尾道市医師会エンジェルプロジェクト尾道市医師会STD・AIDS対策プロジェクト委員会など、尾道市で生活する全ての人が安心して暮らせるよう支援する取り組みも含んでいます。

[出典]図1~4、7、8、9:一般社団法人 尾道市医師会
図5:日本介護福祉会
図6:岡山大学
図10:訪問看護と介護(医学書院刊)
取材協力:片山医院 片山 壽院長、一般社団法人 尾道市医師会 訪問看護ステーション 管理者 林 身江子氏、一般社団法人 尾道市医師会 介護保険サービスセンターおのみち 主任介護支援専門員 永井 クニ子氏、黒瀬歯科医院 黒瀬 濟院長、株式会社ファーマシィ ファーマシィ薬局ふれあい 小川 由美薬局長、杉之原 佳江薬剤師、尾道市立総合医療センター 尾道市立市民病院 薬剤部 神原 弘恵薬剤師、広島県厚生農業協同組合連合会 尾道総合病院(JA尾道総合病院)医療福祉支援センター 豊田 直之氏、社会福祉法人 尾道市社会福祉協議会 加納 彰会長、元民生委員・児童委員 廣保 武司氏、有限会社ブレイクスルー 相川 哲朗代表取締役、有限会社ブレイクスルー 佐古田 専美統括部長、尾道市立大学経済情報学部 髙間 沙織講師