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広島県尾道市

広島県尾道市

尾道市御調町は保健・医療・介護・福祉の連携・統合、住民参加の地域包括ケアシステムを実現しています。

尾道市の地域包括ケアシステムには3つのモデルがあります。

尾道市立総合医療センター 公立みつぎ総合病院
尾道市立総合医療センター 公立みつぎ総合病院

尾道市は2005年に御調町、向島町と合併し、さらに2006年に因島市、瀬戸田町を編入して現在の市となりました。旧・尾道市、旧・御調町、旧・因島市ではそれぞれ独自に医療・介護の提供体制を築いており、現在は、一般社団法人 尾道市医師会を中心とした尾道方式(尾道市医師会方式)、尾道市立総合医療センター 公立みつぎ総合病院(以下、公立みつぎ総合病院)を中心とした地域包括ケアシステム、一般社団法人 因島医師会を中心とした因島医師会方式という3つの地域包括ケアシステムが進められています。

そのうちの一つで、日本の地域包括ケアシステムの先駆けである御調町の地域包括ケアシステムについて、その歴史的変遷や活動内容などを説明していきます。

病院、保健福祉センター、保健福祉総合施設で地域住民を支えています。

御調保健福祉センター
御調保健福祉センター

御調町は現在、保健・医療・介護・福祉の連携・統合訪問看護・介護、訪問リハビリの充実、さらに住民参加によって、先進的な地域包括ケアシステムを展開しています。その中心となるのが、公立みつぎ総合病院、保健福祉センター、保健福祉総合施設です。

公立みつぎ総合病院は御調保健福祉センター(図1 PDF)を併設し、240床(一般病床145床<内訳:一般病棟139床、緩和ケア病棟6床>、療養病床95床<内訳:回復期リハビリテーション病棟72床、医療療養病床23床>)、22診療科(内科、循環器内科、消化器内科、腎臓内科、小児科、外科、消化器外科、整形外科、脳神経外科、精神科、産婦人科、皮膚科、泌尿器科、眼科、耳鼻いんこう科、放射線科、リウマチ科、リハビリテーション科、緩和ケア科、透析科、歯科)を有する総合病院です。診療圏は御調町を中心に周辺の三原市、府中市、世羅町などの一部を含めた約5万人の地域の二次医療を担い、急性期医療・救急医療から在宅・終末期医療までを提供しています。旧御調町には同院の他に診療所が3つあり、同院と連携して医療を展開しています。

尾道市全体の人口は2018年12月31日現在、13万7,627人(男性6万6,444人、女性7万1,183人)、65歳以上高齢化率は35.4%、旧御調町の人口は2018年7月31日現在、6,890人、高齢化率は38.0%、全世帯数は2,998世帯で、高齢者の一人暮らし世帯が全世帯の25.3%、高齢者夫婦のみの世帯が全世帯の14.0%となっています。

御調保健福祉センターには、地域ケア係、健康づくり係、福祉保険係の3係、尾道市北部地域包括支援センター、公立みつぎ総合病院訪問看護ステーション、公立みつぎ総合病院ホームヘルパーステーション、公立みつぎ総合病院介護予防センター、ケアプランセンターみつぎ、歯科保健センター、尾道市社会福祉協議会御調支所などの行政機関が設置されています。

公立みつぎ総合病院 特別養護老人ホーム「ふれあい」
公立みつぎ総合病院 特別養護老人ホーム「ふれあい」

保健福祉総合施設(図2 PDF)は、同院から車で数分の距離にあり、敷地内に介護老人保健施設(定員150人)、特別養護老人ホーム(定員100人)、保健福祉総合施設附属リハビリテーションセンター(診療所、定員19人)、ケアハウス(定員30人)、グループホーム(定員18人、2ユニット)が設置されています。公立みつぎ総合病院の理念である「地域包括ケアの実践と地域包括ケアシステムの構築及び住民のための病院づくり」を踏まえながら、各施設の機能が効果的に発揮できるように相互連携しています。

“寝たきりゼロ作戦”から地域包括ケアシステム構築への道がスタートしました。

保健福祉総合施設附属リハビリテーションセンター(診療所)
保健福祉総合施設附属リハビリテーションセンター
(診療所)
公立みつぎ総合病院 グループホーム「かえで」
公立みつぎ総合病院 グループホーム「かえで」
尾道市立総合医療センター 公立みつぎ総合病院 沖田 光昭 病院長
尾道市立総合医療センター 公立みつぎ総合病院
沖田 光昭 病院長

こうした保健・医療・介護・福祉の体制づくりについて、公立みつぎ総合病院の沖田光昭病院長は「初めに計画を立案し、それに則って体制構築を進めてきたわけではありません。必要性があって対応し、整備してきた結果の姿なのです」と話します。

御調町の地域包括ケアシステム構築は大きく3段階に分類されます。

第1段階は、まだ地域包括ケアシステムという言葉も存在しない昭和40年代(1965~1974年)に“つくられた寝たきり”の解消をめざした“寝たきりゼロ作戦”の開始です。同院の山口昇名誉院長は当時外科医として勤務している中、退院した患者さんが褥瘡や寝たきりが原因で再入院するケースが少なくないことから、1974年から出前医療(現在の訪問診療・訪問看護・介護・リハビリテーションに相当)を始めました。この取り組みが“寝たきりゼロ作戦”です。同院の外来の看護師が交代で在宅訪問をスタートしましたが、当初は患者さんや家族との人間関係ができていないためうまくいかないことも少なくなかったそうです。そうした中でも出前医療を継続し、1979年に院内に病院保健師を置き、患者さんや家族との人間関係をつくって訪問看護を行うことになりました。その後、看護に加えてリハビリテーションの出前も実施しました。

しかし当時は介護保険などもちろんなく、在宅療養する高齢者や家族が抱える福祉課題は全て行政の担当で、医療との間に壁がありました。そこで、行政改革という第2段階に進んだのです。

この行政改革は、病院と行政のドッキングを実現したもので、1978年に同院の全面増改築の際に行政が担当する健康管理センターを併設して1984年から稼働させたのです。町住民課の福祉担当部門と社会福祉協議会のホームヘルパー、厚生課の保健担当部門の保健師などが移管され、国保担当部門も同センターに移りました。健康管理センター所長は同院の病院長が兼任し、これによって保健・医療・介護・福祉の連携・統合が可能となりました。必要に応じて機器類の貸与やホームヘルパーの派遣も病院長の指示で迅速に行われたり、看護師・保健師とホームヘルパーの同行訪問も可能となった例もありました。行政の保健師と病院の保健師は一体化され、保健・医療・介護・福祉の窓口も一本化されたことで、住民にとって非常に便利になったことは言うまでもありません。健康管理センターは1997年に同院に隣接して新築した建物に移動し、名称も保健福祉センターと改めました。

そして、第3段階が保健福祉総合施設の開設です。同施設は公立みつぎ総合病院の一部として位置付けられています。公立みつぎ総合病院から少し離れた高台に1983年からスタートした広島県立の特別養護老人ホームと老人リハビリテーションセンターが介護保険が始まった2000年に御調町に移管されたことに伴い、同院運営の施設群と併せて保健福祉総合施設として再スタートしました。同施設は介護老人保健施設(1989年開設、2008年に50室のユニット化)、ケアハウス(1993年開設)、リハビリテーションセンター(1999年に19床の診療所として開設)、グループホーム(2002年開設)、特別養護老人ホーム(2005年に20室の新型ユニット化)で構成されています。

御調町の地域包括ケアシステムは1980年代に完成しました。

山口名誉院長が地域包括ケアシステムを提唱し始めたのが1983年で、御調町の地域包括ケアシステムは1984年の健康管理センター(保健福祉センターの前身)の併設をもって原形をなし、1989年の介護老人保健施設の開設をもって本格化しました。山口名誉院長が定義付けた地域包括ケアシステムは、現在は次のようになっています。

地域包括ケアシステムとは

「地域に必要な包括ケアを、社会的要因を配慮しつつ継続して実践し、住民が住みなれた場所で、安心して一生その人らしい自立した生活ができるように、そのQOLの向上をめざすしくみである。包括ケアとは治療(キュア)のみならず保健サービス(健康づくり)、在宅ケア、リハビリテーション、福祉・介護サービスのすべてを包含するもので、多職種連携、施設ケアと在宅ケアとの連携及び住民参加のもとに、地域ぐるみの生活・ノーマライゼーションを視野に入れた全人的医療・ケアである。換言すれば保健(予防)・医療・介護・福祉生活の連携(システム)である。地域とは単なるAreaではなくCommunityを指す」。

地域包括ケアシステムとは、保健・医療・介護・福祉の連携・統合システム(図3 PDF)であり、点から線へ、線から面へと広がる地域連携が必要となり、そのためには地域ぐるみの包括ケア体制(図4 PDF)がなければならないと尾道市御調町では考えられています。

沖田病院長は御調町の地域包括ケアシステムについて、

ハード

病院、保健福祉総合施設、保健福祉センターの3つの拠点があること

ソフト(保健・医療・介護・福祉)

健康づくり運動、介護予防

ハート(協働)

多職種連携(共助)、行政(公助)、地域力(互助)のそれぞれが連携する

という3つの側面から捉えることができると言います。

①ハードについて

緩和ケア病棟
緩和ケア病棟

公立みつぎ総合病院は在宅患者の急変時の受け入れを行っています。受け入れる患者は尾道市内からが約34%を占め、残りは三原市、府中市、世羅町などからです。ちなみに御調町域からは尾道市内の約35%です。また、回復期リハビリテーションに力を入れているのも同院の大きな特色です。急性期治療を終えた患者さんに対する365日のリハビリテーションを行っています。同院の患者さんはもちろんですが、他の急性期病院からの転院も多くあり、尾道市の住民からは大きな信頼を寄せられています。在宅リハビリテーション(図5 PDF)は訪問サービス、通所サービス、短期入所サービス、テクノエイドサービスの4つの中で提供されており、ROM(関節可動域)訓練、座位保持訓練、ADL指導・訓練などを実施しています。

尾道市総合医療センター 公立みつぎ総合病院 地域包括ケア連携室 佐藤 妙子 室長
尾道市総合医療センター 公立みつぎ総合病院
地域包括ケア連携室 佐藤 妙子 室長

さらに、尾道市で唯一の緩和ケア病棟(図6 PDF)を持っていることも見逃せません。2002年に5床で開設し、2007年に6床となりました。沖田病院長は「6床では経営的な採算は取れませんが、がんの患者さんの終末期ケアは重要なことであり、本当に必要な患者さんのケアに努めています」と話します。現在、年間の入院数は130~140人で、院外からの紹介が約75%です。患者さんや家族が在宅療養を希望する場合、在宅緩和ケアとの連動によって進めています。訪問する医師は緩和ケア病棟担当医師、御調町で緩和ケアを行う診療所医師で、入院中と同様の緩和ケアを実践しています。

認知症への対応も重要な課題です。同院の地域包括ケア連携室の保健師長を兼務する佐藤妙子室長は、「1991年当時、町の保健師として活動している中で、認知症が増えてきたと実感しました。ご家族がどうしたらよいのか分からずに悩んでいました」と振り返ります。そうした状況にあって、同院の介護老人保健施設では50床の認知症棟を設立したのです。さらに、2002年にグループホームを開設し(1ユニット9床)、2005年には2ユニットに増床し、軽度の認知症の方が安心して暮らせる環境を整備しました。

健幸わくわく 21
健幸わくわく 21
健康福祉展(健康祭)
健康福祉展(健康祭)
保健福祉大学
保健福祉大学
保健福祉推進大会
保健福祉推進大会

その他、病院NST(栄養サポートチーム)在宅NSTの取り組みも積極的に行っています。同院では2002年にNSTが誕生し、その後、併設の保健福祉総合施設でもNST活動がスタートしました。在宅NSTは同院併設の訪問看護ステーションを核として設立されました。病院、施設・在宅介護における栄養サポートサービスの全てに責任のある医師が関与するので、管理の継続性、具体的指導内容や活動方針の一貫性が保たれています。

こうして、病院、総合施設、保健福祉センターが統合して設けられたことにより、御調町内における医療・福祉・介護は一貫したサービスとして提供されるに至りました。ただ、保健福祉総合施設が少し山間にあるため、地域住民との触れ合いが希薄になる点が課題視されています。

②ソフト(保健・医療・介護・福祉)について

健康づくり運動には、1984年から始まった健康づくり座談会という取り組みがあります。高齢者のみならず若い人も含めて健康教育を行うというものでした。年に24回開催し(御調町にある7つの公民館で各1回、約50ある集会場で17回)、病気の予防や健康に関する知識の啓発、参加者からの質問や相談への対応などを行いました。約15年間続いた健康づくり座談会は、2006年からは“健幸わくわく21”という名称に変更して取り組んでいます。保健福祉センターの行政が企画し、住民がテーマを決め、公立みつぎ総合病院のスタッフ(専門職)がチームを組んで各集会所で年およそ8回実施しています(御調町内に集会所47カ所)。2006年のテーマは「健康でいつまでも美しく」でした。その他、健康福祉展(健康祭)、年に5~6回開催する保健福祉大学、年に1回開催する保健福祉推進大会など、活発な活動を行っています。

③ハート(協働)について

協働は地域包括ケアシステムを展開していく上での生命線です。御調町は多職種・多部署連携を積極的に行っています。“寝たきりゼロ作戦”を進めるにあたり、限られたスタッフの数の関係から、各職種の連携を行う必要性に迫られ、連携という手法は急速に根づいていきました。現在では、同院ではあらゆる場面で多職種・多部署によるカンファレンスが開かれますが、沖田病院長は「現場で必要となったら定期的なカンファレンスとは別に臨時で担当者がすぐにカンファレンスを行ったり、連絡会議が設けられています」と、全てのスタッフが協働への意識が高いことを説明します。各部署の責任者が月1回集まって地域ケア連絡会議を行い、今後の地域ケアの在り方やルールづくりについて検討しています。入院中カンファレンスは在宅スタッフを交えて実施し、退院前カンファレンスはさらに多くの関係者が参加しています。例えば、緩和ケア病棟での退院前カンファレンスには、院内スタッフ(医師、看護師、歯科衛生士、臨床心理士、療法士、相談員など)以外に患者さんの家族、ケアマネジャー、訪問看護師、福祉用具業者などが集まります。尾道市では尾道方式(尾道市医師会方式)という15分間の退院前ケアカンファレンスを実施していますが、同院の退院前ケアカンファレンスは尾道方式の形式はとりません。

回復期リハビリテーション病棟では、週5回、医師、看護師、リハビリテーションスタッフ、医療ソーシャルワーカー、薬剤師、管理栄養士、歯科衛生士と合同のADLカンファレンスを行い、リハビリテーション室での成果が病棟での日常生活に生かされているかどうかを確認します。入院患者の状態は月1回このADLカンファレンスで検討され、さらに、週1回のリハビリテーションカンファレンスやリハビリテーション回診でも確認されます。

ケア担当者会議
ケア担当者会議

多職種・多部署連携に対する意識の高さは行政や地域の医療・介護関係者も同様で、住民を主体としてシームレスな医療・介護連携(図7 PDF)が展開されています。多職種による在宅カンファレンスも活発に行われ、在宅患者についてのサービス担当者会議(ケアカンファレンス)を毎週開催しています。この会議は、リハビリテーション専門職を含む在宅サービスに関与する全てのスタッフと機関が参加する会議です。

地域包括ケアシスムを運用する上で必要な病院・施設スタッフと地域のスタッフの連携については、各部署の責任者が出席する在宅ケア連絡会議(継続看護検討委員会を含む)を月に1回開いています。前月に在宅へ退院・退所した全ての人および退院・退所の予定で問題がある人が対象で、病院・施設から在宅へ連続したケアが提供できるようにサービス調整を行います。また、地域のスタッフ同士の連携も欠かせないので在宅サービスに関する全てのスタッフと機関が参加し、週1回、現場のスタッフが参加するケア担当者会議を行っています。法律で義務付けられている地域ケア会議はもちろん定期的に開催しています。地域ケア会議は地域包括支援センターが主体となって、個別事例から行政課題まで第1~3層と積み上げていく会議です。

御調町では多職種・多部署連携が活発に行われていますが、協働において忘れてはならないのは住民の活動です。専門職は共助行政は公助患者さん・利用者さん自身は自助、そして住民は互助が求められますが、特に互助に関しては全国的にもまだまだ進んでいない状況にあります。御調町は7地区に大別され、その下に振興区といわれる小さな区割りがあります。昔からいわゆる隣組制度があり、近所同士で助け合いをする風土がありました。そうした風土の上に福祉バンク制度という時間貯蓄制度を1990年に発足させました。元気なときに要介護高齢者の面倒をみて、1時間1点としてポイントを貯め、自分が倒れたときなどにそのポイントに応じて看てもらう制度です。尾道市との合併で制度を継続させることは難しくなり、廃止されましたが、多くの住民は地域の風土も相まってボランティア精神は継続され、デイサービス、緩和ケア病棟、在宅などさまざまな場でボランティア活動を行っています。「現在課題となっているのは高齢の男性がなかなか外に出ないということです。互助力をさらに高めるにはこれを解消していくことが必要となります」と沖田病院長は話します。現在、企業などを退職された方に地域のリーダーになっていただき、民生委員なども巻き込んで見守りの仕組みを構築しつつあります。

介護予防という観点からの住民参加は重要です。2004年に有料の国保健康増進施設であるいきいきセンターを開設し、尾道市との合併後は公立みつぎ総合病院の事業として展開しています。2013年から尾道市全体でスタートしたシルバーリハビリ体操には多くの住民が参加しており、その指導士の養成も進んでいます。沖田病院長は「行政は地域住民の活動の仕掛けづくりを行い、社会福祉協議会が運営する御調町ボランティア協議会はボランティアの養成を行うなど、町ぐるみで住民参加を支援しています」と話します。

住民啓発や意見収集の側面からは、“健幸わくわく21”と呼ばれるイベントを開催しています。1年で22カ所程度、地域住民を対象にレクチャーを行ったり、保健・医療・介護・福祉に対する住民の意見を細かく収集できる仕組みとして成立しています。また、保健福祉大学を設け、ホスピスボランティアの育成にも努め、今では31人のホスピスボランティアが活動しています。こうした活動が功を奏し、現在は100人を超える各種ボランティアの方々が登録されています。

地域包括ケアシステムは社会の変化に応じて変化させていく必要があります。

御調町の“寝たきりゼロ作戦”開始から半世紀近くになろうとする現在、地域包括ケアシステムによって、寝たきりの減少(図8 PDF)医療費伸び率の鈍化(図9 PDF)経済効果地域の活性化といったまちづくりなどで成果が上がっています。沖田病院長は御調町の地域包括ケアシステムについて「社会の変化に応じて変化させていく必要があります」と話し、これからの課題について次のように考えています。

  • 高齢者の人口が減るのでダウンサイジングしていくこと。
  • 独居高齢者世帯、老老世帯がさらに増えることに対し、地域のニーズに合わせて、最期を迎えるのは在宅だけではないという在宅のあるべき姿を検討すること。
  • 若い人たちに保健・医療・介護・福祉の連携、住民参加の大切さを伝えていくこと。
  • アドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning:ACP)を浸透させていくこと。

ACP(人生会議)とは、患者さん本人と家族が医療者や介護提供者などと一緒に、現在の病気だけではなく、意思決定能力が低下する場合に備えて、あらかじめ終末期を含めた今後の医療や介護について話し合うことや、意思決定ができなくなったときに備えて、本人に代わって意思決定をする人を決めておくプロセスのことです。自立支援をするためにACPの推進は重要な課題となっています。

高齢化がさらに急速に進む中、認知症の人が増えてきました。治療を中断していたり、医学的介入が必要な人に対しては認知症初期集中支援チームが稼働します。そうした人たちの生活の在り方を見守る必要があるのと同時に、不安に思う家族などからの相談を地域包括支援センターや保健福祉センターの保健師が受けて対応しています。沖田病院長は、「保健師などが相談に答えることで、認知症に関する住民教育にもつながっています」と話します。認知症の患者さんとその家族の会が設けられる他、認知症カフェも開催しています。その一つである「とまり木カフェ」は月に1回開催し、ソーシャルワーカーや臨床心理士が関わり、毎回14~15人の参加者があるそうです。

公立みつぎ総合病院を中心とした御調町の地域包括ケアシステムは、高齢者のケアや生活を支えるだけではなく、まちづくりに他ならないことを教えてくれます。

取材協力:尾道市立総合医療センター 公立みつぎ総合病院 沖田 光昭病院長、地域包括ケア連携室 佐藤 妙子室長
[出典]図1~7:尾道市立総合医療センター 公立みつぎ総合病院
図8、9:尾道市