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Torch トーチ  Voice 全国の有識者との対話から

希少疾患のエキスパートに話を聞く
血友病診療連携により
より多くの患者さんに個別化医療と
包括医療の提供を(後編)
白幡 聰 先生
しらはた あきら
産業医科大学 名誉教授

血友病診療連携の今後の課題としてはどのようなことがあげられますか?

診療連携の大きな目的は個別化医療と包括医療を広く提供することですが、さらに情報の集約化も非常に重要な要素です。特に安全性の情報は、個々の患者さんのデータで判断できる情報とマスで見ないと分からない情報がありますので、それらを速やかに把握してバイアスがかからない状態で評価、分析を行い、速やかに情報を開示していくことが重要です。そのためには患者レジストリの構築が必要不可欠ですが、800もの施設に患者さんが分散している状況で全数登録を行なうことは非常に困難です。診療連携で年に1度でもブロック拠点病院あるいは地域中核病院を受診する体制が確立すれば、そこで情報を集約していくことが可能となります。患者レジストリの構築については、現在、患者レジストリ運営委員会で検討を重ねているところです。

今後どのようなことに注力されていかれるのでしょうか?

治療選択肢が増えたことで、患者さんごとに個別に治療を考える時代となりました。半減期標準型製剤しか治療選択肢がない時代は、標準的治療をガイドラインで示すことができましたが、個別化治療となるとガイドラインで対応することは困難です。個別化治療を有効かつ安全に提供できるように、さらには将来的に遺伝子治療などの新しい治療が可能となった時に、必要とされる治療が有効かつ安全に提供できるように、血友病治療のレベルアップを図っていくことが重要です。

そのためには血友病診療に関わる全ての医療者の皆様に、血友病治療に関する基礎的な知識を身につけていただくことが重要となります。これまでそれぞれの地域で研修会などを開催してきましたが、現在のコロナ禍で研修会も開催できない状況が続いていることもあり、eラーニングの無料講座を開設しました。血友病を診療している非専門医だけでなく、コメディカル向けのコンテンツも整備し、分かりやすい内容になっています。また、各コンテンツの視聴時間は15~30分程度ですので、ご興味のあるところだけでも構いませんからぜひご視聴下さい。血友病治療は進歩し続けていますので、継続して学んでいただけるように今後、コンテンツ内容の更新や新規コンテンツの追加などバージョンアップしていく予定です。

ブロック拠点病院、地域中核病院、診療連携施設、それぞれの立場に期待されることはどのようなことでしょうか?

ブロック拠点病院では、患者さんのいろいろなニーズに対応できるよう包括医療をさらに充実させていくことはもちろんですが、人材の育成もブロック拠点病院に期待されることだと思います。医師だけでなく、看護師や理学療法士など他の医療職も含めて、血友病診療に携わる人材を育成していくことが求められます。地域中核病院は個別化医療・包括医療を提供していく立場ですが、患者さんの課題に自施設では対応できないと判断された場合には速やかにブロック拠点病院につなぐなど、ブロック拠点病院との連携も密に行なっていくことが求められます。また、患者さんの日常に寄り添う地域の診療連携施設では、血友病診療連携の意義、包括医療の有益性をご理解いただき、是非とも患者さんに専門スタッフのいる施設への定期的受診を働きかけていただければと思っています。この地域の診療連携施設の医療者による患者さんへの働きかけが最も重要な部分ともいえると思っています。

血友病診療連携体制の構築は、単に血友病診療の課題解決というだけではなく、様々な問題を抱える疾患の一つのモデルとして他の難治性疾患や希少疾患にもつながっていくことを期待しています。

(2021年9月取材)