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Torch トーチ  Voice 全国の有識者との対話から

希少疾患のエキスパートに話を聞く
血友病診療連携により
より多くの患者さんに個別化医療と
包括医療の提供を(前編)
白幡 聰 先生
しらはた あきら
産業医科大学 名誉教授

全国で進められている血友病診療連携の目的について教えてください

近年の血液凝固因子製剤の進歩によって様々な特徴を持つ抗血友病製剤が使用可能となり、その結果、血友病治療は個々の患者さんのライフスタイルや薬物動態に応じた個別化治療の時代となりました。一方、我が国では約6,000名の血友病患者さんが800以上の施設に分散して治療を受けており、その多くは診察している血友病患者さんが数人の施設で、非専門医が診療にあたっているので、治療選択肢が豊富になった現在、治療格差が広がってしまっているというのが実情なのです。その解消のために必要なのが診療連携であり、定期的に血友病専門医の診察を受けることで、一人ひとりの患者さんのニーズにかなった治療をできるだけ多くの患者さんに提供していくことを目的としています。

さらに、個別化医療とともに重要なのが包括医療の提供です。止血管理だけでなく、様々な問題を抱える血友病患者さんでは、血友病のケアに精通した整形外科医、リハビリテーション科医、歯科口腔外科医などの医師、看護師、理学療法士の関わりが必要であり、さらには臨床心理士やソーシャルワーカーの介入も非常に重要となります。海外のデータではこのような包括医療を受けている患者さんと受けていない患者さんでは、平均余命、健康関連QOL、関節機能、生涯にわたる生産性、加齢に伴う合併症に差が生じることが報告されています。しかし、少人数の患者さんを診療している施設では、多職種によるケアの提供は難しく、包括的ケアを提供できる施設との診療連携が必要不可欠であるといえます。

どのような診療連携体制がとられているのでしょうか?

現在全国で進められている診療連携では、北海道から九州・沖縄まで全国を7つのブロックに分け、それぞれのブロックで血友病診療の中核を担うブロック拠点病院(全国で14施設)と、各都道府県に1施設以上設置することを目指して認定を進めてきた地域中核病院が、各地域で血友病診療を行なっている施設と連携し、広く個別化医療と包括医療の提供を行なうというのが基本的な体制です(図1)。ブロック拠点病院は地域の各診療施設と連携するだけでなく、地域中核病院と連携して地域の血友病診療をリードする役割を担います(図2)。

この診療連携で重視したのは患者さんの利便性です。これまで地域の医療施設で血友病診療を受けてきた患者さんにとって、居住地近くの施設で日常の診療を受けることができるという利便性を損ねることなく、年1回など定期的にブロック拠点病院あるいは地域中核病院を受診してもらうことで、より多くの患者さんに最適な個別化医療、包括医療を提供することが可能となります。

図1. 血友病診療ブロック拠点病院とその主要機能

血友病診療ブロック拠点病院とその主要機能

図2. 血友病診療連携体制

血友病診療連携体制

全国で診療連携を有効に機能させていくためにはどのようなことが必要なのでしょうか?

診療連携体制を構築するといっても、全国一律に進めるものではなく、地域の実情を鑑みた上で、その地域で最適な連携の形を模索することが非常に重要です。そのため各ブロックのブロック拠点病院、地域中核病院のそれぞれの代表者などで構成されるブロック運営協議会で、各地域の診療連携をどのように進めていくか検討を行なってもらっています。

また、診療連携を推進し十分に機能させるために最も重要なのは、まずは患者さんに診療連携の意義を十分理解してもらい、定期的にブロック拠点病院・地域中核病院を受診するというアクションをとってもらうことです。そのためには地域で診療を行なっている血友病を専門としない先生方にその意義を理解していただき、患者さんにブロック拠点病院や地域中核病院への受診を働きかけてもらうことが非常に重要です。現在、血友病診療連携委員会ではそのための一助となるガイドブックを作成しています。個別化医療や包括医療など血友病診療についての情報だけでなく、全国のブロック拠点病院と地域中核病院、そして血友病性関節症の手術など血友病医療の中で特別な役割を果たす特殊機能型病院の外来診察日、血友病担当医師や看護師の名前、夜間救急の対応の可否や血友病に関して診療可能な診療科についてなどの情報を網羅して掲載する予定で現在編集作業が進んでおり、年内の発行を目指しています。

後編へ続く

(2021年9月取材)