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Torch トーチ  Voice 全国の有識者との対話から

希少疾患のエキスパートに話を聞く
遺伝性希少疾患の患者さんを取り巻く
スティグマ
その払拭には疾患認知の向上が第一歩
田中 暁生 先生
たなか あきお
広島大学大学院医系科学研究科 皮膚科学 准教授

遺伝性の希少疾患の一つである遺伝性血管性浮腫(HAE)の患者さんは、どのような場面で社会的偏見(スティグマ)を感じられているのでしょうか?

社会生活の中でHAEの患者さんはさまざまなスティグマを経験されていると思います。
その要因としては、HAEという疾患自体が社会的に認知されていないことが大きいと思います。
広く一般に認知されている疾患であれば、症状や治療法について多くの人が想像できますが、非常に稀な疾患であり、発作時以外は全く症状がないHAEでは、少し腫れただけでなぜそこまで急いで病院に行かなくてはいけないのかなど、周囲の理解は得られにくく、それがスティグマにつながっていると考えられます。

HAE患者さんの人生にスティグマはどのように影響しているのでしょうか?

就職、結婚、子供を持つことを考える時など、ライフイベントごとで患者さんはスティグマを感じています。発作が出た時にすぐに病院に行くことができる職種、環境なのかといった仕事の選択時に影響を与える可能性もありますし、遺伝性疾患ということから、結婚を考えた時にパートナーとその家族にどのように伝えたらよいか悩まれる方も多いと思います。疾患のことを伝えても理解してもらえないのではないか、偏見を持たれるのではないかと自分に対してベクトルが向いてしまい自己スティグマに陥るケースもあると思います。
また、非常に希な疾患であるため、全ての医療者がHAEの知識を持っているわけではないことから、医療の場でもスティグマが存在する可能性もあります。確定診断を受ける前には、突然の浮腫や腹痛を繰り返し、通常の治療を行なってもなかなか効果がみられない患者さん、いわば“難しい患者さん”として扱われてしまうこともあるように思います。

HAE患者さんにとってよりよい社会を作っていくために何が必要なのでしょうか?

スティグマを払拭していくことが重要であり、そのためには疾患に対する認知をあげていくことが第一歩だと思います。HAEとはどのような疾患なのかはもちろん、正しく診断されて発作時に適切な治療が行なわれれば、発作時以外の時は健康な人と変わらない生活が送れる疾患であるということが広く認知されるようになれば、スティグマは払拭されていくと思いますし、一般の方々だけでなく医療者においても疾患認知が高まることで、未だ確定診断までたどり着いていない方が、確定診断へと近づくことにもつながると思います。さらに、患者数が非常に少ないHAEの患者さんは、必ずしも近隣にHAEの専門知識を持つ医師がいるとは限りません。患者さんには発作時の対応について紹介状を持ってもらっていますが、専門知識を持つ医師と地域の病院の連携を進めて、地域で治療を受けられるという安心感をHAE患者さんが持てるようにしていくことも非常に重要だと考えています。

(2021年7月取材)