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Torch トーチ  Voice 全国の有識者との対話から

希少疾患のエキスパートに話を聞く
希少疾患の患者さんの苦悩を知り
早期診断につなげる
高村 さおり 先生
埼玉医科大学総合医療センター 皮膚科助教
たかむら
さおり
埼玉医科大学総合医療センター皮膚科助教。専門領域は乾癬・皮膚科学全般。遺伝性血管性浮腫(HAE)などの希少疾患の診療にも詳しい。日本皮膚科学会認定専門医。
希少疾患の早期診断の課題

先生は、希少疾患の中でも診断が難しいといわれる遺伝性血管性浮腫
(HAE)を専門とされていますが、HAEの診断に至るまでの診療例について
教えてください。

当院で診療した10代のHAEの患者さんの場合は、5歳頃から顔面や手などの浮腫を数ヶ月に1回は繰り返し、年に1回は原因不明の激しい腹痛で苦しんでいました。HAEに伴う腹痛は、嘔気や嘔吐を伴い、軽いものから激しいものまで様々ですが、一般的な胃腸炎や生理痛などと似た症状を示すこともあります。この患者さんも、症状が強い時には、学校の保健室で寝込むことが多かったと聞いています。当初は診断がつかず、他院の外科に入院しており、治療の中心は脱水症状を抑える補液治療でした。当科受診後は、繰り返す浮腫というエピソードより血管性浮腫を疑い、血液検査にてHAE1型と診断しました。HAEはいまだ認知度が低く、中には急性腹症として開腹術をされる患者さんも少なくありません。患者さんは、外科、内科、婦人科など様々な診療科を受診されることがあるため、HAEは多くの医療者に知っておいていただきたい希少疾患の一つであります。また、この患者さんに限らず、多くの患者さんは、診断がつかないまま、いまも不安な日々を過ごしているのが実態です。

希少疾患の診断率向上に向けて

早期診断に向けてすぐにできる工夫はありますか。

たとえば、HAEの場合、発作頻度には個人差があります。発作の頻度が年に数回という患者さんも少なくありません。そのため、診療時にはすでに目に見える症状がなく、患者さんも状況を上手く説明できないと、医師が診断に難渋するケースも少なくありません。そこで有用となるのが「写真の活用」です。最近はスマートフォンの普及に伴い、発作時の様子などを画像に簡単に記録できます。たとえば、顔面や手足などの皮下浮腫の場合は、診察の時点ではすでに症状が消えていても、発作時に写真を撮っておけば、そこから正しい診断につながります。また、腹痛発作の場合も多くの患者さんは、以前は手足などが腫れたことがあるという経験をお持ちです。当院でも、診察時にすでに症状が消えている場合には「次に症状が出た時は、携帯電話などで写真を撮っておいてほしい」とお願いしています。

希少疾患の患者さんが受診する診療科(遺伝性血管性浮腫の場合)
早期診断には関係者の協力が不可欠

希少疾患の早期診断の実現に向けて、メッセージをお願い致します。

希少疾患の早期診断の実現には、協力者の存在が不可欠です。そこで私たちは、院内勉強会や症例検討会、さらには実際に各診療科のスタッフと会って、疾患の認知に努めています。疾患に対する認知が進めば、協力者もおのずと増えてきます。最近はオンライン勉強会など、外部の人たちとの連携の機会も増えてきました。連携が進み、複数の医療施設をまたぐ診療ネットワークができれば、早期診断だけでなく、たとえば治療中の患者さんが転居して主治医が変わっても、切れ目のない医療の提供が可能になります。1人でも多くの医療者に希少疾患を知っていただき、そこから早期診断に向けた協力関係が生まれることを期待しています。

(2021年5月取材)