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Torch トーチ  Voice 全国の有識者との対話から

日本の希少疾患の課題解決に向けて
希少難病患者さんのQoL確保が
今後の課題
酒井規夫 先生
大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻 教授
さかい
のりお
1959年生まれ。1994年に大阪大学大学院医学系研究科博士課程修了。
同研究科小児科講座の准教授を経て2015年より現職。
専門は先天性代謝疾患、遺伝カウンセリング、小児看護学ほか。

発病の機構(原因)が明らかではなく、治療法が確立していない疾患を難病(希少難病)と呼びます。近年、多くの希少難病で原因遺伝子が解明され、多くの難病は遺伝性疾患であることがわかってきています。ただ、原因はわかっても、病態が十分解明されておらず、診断や治療が困難な場合は、指定難病と考えてよいとされています。遺伝性疾患の有病率は、単一遺伝疾患が人口の約1%強、多因子疾患(複数遺伝子+環境因子)が人口の5~6%を占めるといわれており、その総数を見ると、決して希少な病態ではありません。希少難病の病態解明が、コモン・ディジーズの病態解明の糸口にもつながることも期待されています。

希少難病に対する治療が急速に進歩する一方で、社会における難病、すなわち希少難病患者さんを取り巻く社会的状況は、いまだに多くの課題を残しています。実際、進学、就労、結婚という様々な場面で、希少難病の患者さんは、いまもなお多くの障害に直面しています。

希少難病に対する治療法の進歩と比べて、社会における難病の位置づけは、まだ多くの課題が残されています。私たちは、ただ生きるのではなく、人生におけるQOL(生活の質)の充実を目指すことが大切です。難病の患者さんの中には、歩くことや食事することができない方もいらっしゃいますが、できる人も苦手な人も、どちらも同じ人間なのに、その当たり前のことに医療や社会が対応できていない。難病の方にとってのQOLとは何か、学会に患者会の方に来ていただいたりして、医療者も患者に学び、医療も日本社会全体も、もっと進歩していくべきではないでしょうか。最近では、SDGs(持続可能な開発目標)でも「すべての人に健康と福祉を」¹)とうたわれていますが、日本人の気遣い、思いやりが、難病に対する理解にもつながり、日本社会がもっと自由で多様な社会へ少しでも変わっていければと願います。

1) https://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/31737/