日本内分泌学会は日本甲状腺学会と合同で、2017年9月、「甲状腺クリーゼ診療ガイドライン2017」を刊行した(書籍版のみ。南江堂より刊行)。
甲状腺クリーゼは、甲状腺中毒症により生体の代償機構が破綻し、多臓器不全を伴う致死的かつ救急疾患であり、的確な早期診断と緊急治療が必要とされる病態である。そのような重要な疾患であるにもかかわらず、診断および治療に関する世界共通の確立したガイドラインはなかった。そのような状況下で、2006年に両学会で「甲状腺クリーゼの診断基準作成と全国疫学調査」委員会を立ち上げた。同委員会では、2008年に「甲状腺クリーゼの診断基準(第1版)」を作成し、その診断基準を基として厚生労働省の研究事業として全国で疫学調査を行い、また、その結果を解析して反映させ、2012年に「甲状腺クリーゼの診断基準(第2版)」を樹立した。その後、さらに治療指針に関する検討も進められ、今般、診断と治療を含むガイドラインを策定するに至った。昨年10月に、日本内分泌学会誌(Endocrine Journal)で英語版のガイドラインを発表し、今回はその日本語版として発行された。本ガイドラインには、診断の実際、様々な症状に対する具体的な治療法、ICU入室基準、予後予測、発症予防、海外の現状のほか、診療全体のアルゴリズムを掲載し、内分泌代謝領域のみならず救急や集中治療、循環器、消化器、神経などが収載されており、他領域の臨床医にとっても役に立つ実践的な指針となっている。
(注)本ガイドラインの具体的な内容については、直接ガイドライン本体で確認されることをお勧めいたします。