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発達障害における親子相互交流療法の実践
総合母子保健センター 愛育クリニック 小児精神保健科 部長
小平 雅基 先生

親子相互交流療法などの心理社会的治療により、養育者が子どもとのかかわりについて学ぶ機会を提供している愛育クリニックの小平雅基先生に、親子相互交流療法や養育者と子どもとの愛着に関して伺いました。
養育スキルの重要性
発達障害のある児の養育者の中には、自分の感覚で子どもに“ボール”を投げてみてもキャッチしてもらえず、イメージどおりの親子関係が築けないことで子育てに自信をなくしている方が少なくないと感じます。子どもの側のストライクゾーンが広ければ、ラフな投げ方でもボールを受け止めてもらえますが、発達の特性に偏りがあるとストライクゾーンが狭くなりがちです。したがって、その狭いストライクゾーンに向けて、より丁寧にボールを投げ込むスキルが必要になります。
こうした考えから、当院では養育者の子どもへのかかわり方のスキル向上に力を入れています。その中でも中心的なプログラムであるペアレント・トレーニング(PT)には注意欠如・多動症(ADHD)の概ね半数程度の養育者が参加しています。
さらには、よりインテンシブな治療として、親子相互交流療法(Parent Child Interaction Therapy:PCIT)にも取り組んでいます。1970年代に米国のEybergによって考案・開発された行動療法で、海外研究ではエビデンスも確立されています1,2)
【参考文献】

1)PCIT-Japanホームページ(http://pcit-japan.com/custom.html), PCITとは(2020年2月17日に利用)

2)Thomas R, et al. Pediatrics, 2017, 140(3), e20170352.

親子相互交流療法(PCIT)とは
PCITは、概ね2~7歳の子どもとその親(養育者)を対象とし、親子間の愛着の回復と養育者の適切な命令の出し方の2つを中心概念としています。治療室内で親が子どもと遊びを通して交流し、別室にいる治療者がインカムを用いて親にのみ聞こえるかたちで子どもへの対応を指導します。当院では専用の治療室を設け(写真)、リーダーである医師のもと、心理士が中心となって治療を行っています。1セッションの長さは1回60~90分で、可能であれば週1回のペースで実施し、通常12~20回で終了します。
PCITの大きな特徴は、適切な行動に着目して強化していくことと、親の対応に一貫性を持たせている点です。親の対応がその時々で変わることは、子どもにとってわかりにくく、親に対して不適切な交渉を始める要因にもなります。この行動をすると親は反応しない、この行動をするとほめてもらえるということを一貫して伝えていくことで、子どもの行動や情緒が落ち着いてくると実感します。
写真 親子相互交流療法(PCIT)専用の治療室
PCITでは左の部屋で親が子にプレイセラピーを行い、マジックミラーで隔てられた隣室(右)から治療者がインカムを用いて親に子どもへの対応を指導する
半年から1年近くにわたる治療の前後では、多動で好ましくない行動を繰り返す子どもとの日常に疲れ果て、良好な関係が築けないでいた親とその子どもが、PCITを経て、自然な距離感になり、双方向の自然な会話ができるようになる様子を目の当たりにします。子どもとのかかわりについて「適切ではない行動は無視する」と助言されても、実際には怒りに震えてしまったり、自信を失って不安にさいなまれてしまったりと、家庭での実践が難しいのが現実です。PCITは、とるべき行動やかけるべき言葉をライブで指導されるので、親にとってもわかりやすく、また、ライブで適切な行動に着目する練習の機会があるので、気づきを促しやすいのではないかと感じます。
ただ、治療を受ける養育者は母親が中心になってしまいがちなため、父親との間に意識の差が生じがちな点は今後の課題だと考えます。当院では父親が一緒に参加する場合も少なくありませんが、より参加を促していければと思っています。また、PTもPCITも十分に保険でケアされていないため、費用の面から参加を断念するケースもあり、こうした心理社会的治療をより保険がケアしていくことは重要な課題です。