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発達障害の心理社会的治療の意義と実際
ハートランドしぎさん 子どもと大人の発達センター センター⾧
岩坂 英巳 先生

成人に対する治療・支援とは
成人の発達障害においては、小児期から診断がついているケースと青年期・成人期に診断されたケースを分けて考える必要があります。前者では、周囲に一定の理解があることが多いのですが、診断のないまま、できないことやわからないことを責められ続けて成長すると、自信を失い、うつ病や不安障害などの二次的障害が起こりがちです。
治療は、併存障害の治療を優先した上で、環境調整を含む心理社会的治療から行います。家族に本人の特性を理解してもらい、何より本人に自身の特性を理解してもらった上で、生活において苦手なことへの対処法を一緒に考えていきます(図3)。
ただ、自分は発達障害ではないかと受診する人の中には診断がつかない例も少なくありません。2016年4月〜2019年3月末までに当院の成人発達外来を受診した237名のうち、およそ4分の1は、診断がつきませんでした。かかりつけ医でうつ病などの治療中に紹介を受けた人でも診断がつかないことがあるため、発達障害の診断・治療においては、専門機関で十分にアセスメントを行い、連携することが重要だと思います。
図3 ADHDのある大人の心理社会的治療の方向性

・小児期に診断されて成長してきたケースと、青年期・成人期以降に診断されたケースは分けて考える必要がある

・病院受診時に前面に出ている併存障害の様相やその背景、これまでの本人の生活経過はきわめて多様である

・本人自身が、生活の困り感を十分自覚できていないことがある

心理社会的治療の方向性
  1. 併存障害に対して薬物療法などの治療を優先した上で、本人の特性面に注目した治療、症状顕在化につながった環境の調整を行う
  2. 環境調整の前に、周囲が本人の「生きづらさ」を少しでも理解できるようにする
  3. 本人自身が自分の特性を理解して、生活の中での対処法を身につけていけるようにする
  4. 生活の視点で、障害年金や手帳などの診断書作成の機会も多いことを意識する
岩坂英巳先生ご提供資料より作成
成人発達障害就労準備プログラム(JOBy)
仕事に就けない、仕事が続かないという悩みを抱える人が多いので、当院では岡山県精神科医療センターの取り組みを参考に、2017年からJOByに取り組んでいます。全12回で、初回を説明会とし、参加するかどうかを本人に決めてもらいます。少人数のグループで座学とSSTで、話しかけるタイミングや共同作業などを学習・練習し、最後に就労移行支援施設での3日の外部実習を行います。
うれしいことに参加者24名中7名が職場に定着しています。就労支援で重要なことは定着支援です。診察の中でのフォローはもちろん、ケースワーカーが巡回してフォローしているケースも少なくありません。
また、仕事をしたい気持ちにふたをしている人もいますので、2019年からはJOByを2つのプログラムに分ける試みも始めました。引きこもりの状態にあった人が参加することを目標とする前半を受講して自信をつけ、後半のJOByにつながったケースもあったため、こうした工夫も有用だと思います。通常の精神科のデイケアにおいては、発達障害のある人は自由度が高いと実施することが明確でないために混乱することがありますので、ある程度の枠組みを設けることが必要だと思います。
治療・支援における多職種連携の重要性
発達障害のある人を途切れることなく支援するには、縦と横の連携が必要になります。縦は進学等に伴う引き継ぎ、横はその時点での多職種との連携で、幼児期は保健・福祉・医療、小学校・中学校では教育・福祉・医療、高校・大学以降では就労・福祉・医療の連携が必要です。各組織内での横の連携も大事です。
医療機関と学校との連携においては、環境も立場も違うことを踏まえ、親と学校側が敵対しないように配慮することが大切です。奈良では、病院の専門職、児童相談所のケースワーカー、心理士、特別支援に携わる学校の先生が参加する泊まりがけの勉強会を20年ほど前から行い、顔の見える関係をつくっています。医師としては細かい情報でもたくさん教えてもらえるととても助かります。多職種が発達障害のある人の応援団として連携し、情報交換していくことが治療・支援の上で何より重要です。 【参考文献】1.岩坂英巳編著; ADHDの子どもたち, 111-119, 合同出版, 2014.
いわさか ひでみ
岩坂 英巳 先生

ハートランドしぎさん
子どもと大人の発達センター センター長
精神保健指定医。精神神経科専門医。児童精神科認定医。1987年奈良県立医科大学卒業、同大精神医学教室入局。1998〜1999年に米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校に留学。奈良県リハビリセンターなどを経て、2004年奈良教育大学教授(2007年より特別支援教育研究センター長兼任)。2016年より現職。日本ペアレント・トレーニング研究会会長。SST普及協会近畿支部長。
精神保健指定医。精神神経科専門医。児童精神科認定医。1987年奈良県立医科大学卒業、同大精神医学教室入局。1998〜1999年に米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校に留学。奈良県リハビリセンターなどを経て、2004年奈良教育大学教授(2007年より特別支援教育研究センター長兼任)。2016年より現職。日本ペアレント・トレーニング研究会会長。SST普及協会近畿支部長。

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