ADHDは家族内集積性があり、高い遺伝性があることが示唆されています1)。
- 家族研究において、ADHD患児の第一度親族は、ADHDの発症リスクが5倍になることが示されています1)。
- 双生児研究では、発病一致率は一卵性で50~80%、二卵性で30~40%で、遺伝率は76%と推定されています1)。
- 養子研究では、ADHDであった養子の養父母の6%、ADHDであった養子ではない子の実の親の18%にADHDがみられました1,2)。
いくつかの遺伝子について、ADHD発症との関連が示唆されています1)。
- 候補遺伝子の研究において、ADHDでは、モノアミン(ドパミン、セロトニン、ノルアドレナリン)神経伝達の失調が考えられています1)。
- ドパミンD4受容体遺伝子(DRD4)、ドパミンD5受容体遺伝子(DRD5)、ドパミン輸送体遺伝子(DAT)、ドパミンβ-水酸化酵素遺伝子(DBH)、セロトニン輸送体遺伝子(5-HTT)、セロトニン受容体1B遺伝子(HTR1B)、およびシナプトソーム関連タンパク質25遺伝子(SNAP25)については、いずれも3つ以上のケースコントロール研究または家族ベースの研究において、ADHDとの関連が示されています3)。
- ドパミントランスポーター遺伝子(SLC6A3/DAT1)とドパミン受容体遺伝子(DRD4)の変異体は、神経心理学的タスク、特定の脳領域の活性化、メチルフェニデートに対する反応性、遺伝子発現量に関連しており、バイオマーカーとして有望視されています(図)4)。
現時点では、ADHDは単純な遺伝子疾患ではなく、個々の影響力は小さい複数の遺伝子が相互に影響し合い、そこに複数の環境要因の影響が加わって、相互に関連し合いながら神経生物学的リスクが高められる疾患であると考えられています1)。