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監修:広島市立広島市民病院 病院長 秀 道広先生
⇒詳細はHAEを疑う症候へ
遺伝性血管性浮腫(HAE)は、皮膚症状と病歴から、比較的容易に診断することができます。
しかし、消化管浮腫や喉頭浮腫が単独で起こった場合の診断は、なかなか難しいと考えられます。
アナフィラキシーショックや気道閉塞などで救急搬送されてくる患者さんの中に、HAEの患者さんが含まれていることもあります。窒息を起こす気道浮腫の原因はさまざまですが、HAEをその1つとして常に念頭に置くことが大切です。
⇒詳細は喉頭浮腫の鑑別へ
血管性浮腫の診断は「クインケ浮腫」にとどまることなく、問診や検査によって病型や原因を探索し、診断することが重要となります。ここでは、血管性浮腫における鑑別のポイントを紹介します。
血管性浮腫の鑑別手順として、まず、一般的な浮腫と鑑別する必要があります。さらに、問診や各種検査により、血管性浮腫の鑑別を行い、HAE以外の血管性浮腫を除外します。具体的には、後天性血管性浮腫(Acquired angioedema: AAE)、薬剤誘発性血管性浮腫、アレルギー性血管性浮腫などの鑑別が必要です。
まず、浮腫を鑑別する必要があります。⇒詳細は浮腫の鑑別へ
突発的に生じる顔面(特に、口唇や眼瞼)、四肢の限局性の浮腫がある場合、血管性浮腫が疑われます。
蕁麻疹の有無は、血管性浮腫の病型を診断するうえで重要な情報です。ACE阻害薬による血管性浮腫またはHAEは表在性の蕁麻疹を伴いません。
⇒詳細は蕁麻疹の有無からみた血管性浮腫の鑑別ポイントへ
詳細な病歴、誘発因子(ストレス、外傷、抜歯、月経、運動、感染など)、薬剤摂取歴の有無、家族歴を聴取することは、血管性浮腫の鑑別に有用です。⇒詳細は血管性浮腫の分類と鑑別へ
血管性浮腫は一般採血において特別な所見を示すことは少ないので、下記の表に示すような原因別の検査を施行する必要があります。
薬剤 | 検査 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
アレルギー性血管性浮腫 | □IgE RAST、ブリックテスト、皮内テスト | ||||||||
薬剤誘発性血管性浮腫 [非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やACE阻害薬など] |
□誘発テスト(再投与試験)
|
||||||||
HAE |
□補体系検査
|
||||||||
後天性C1-INH欠損症 |
□補体系検査
|
古江増隆 総編 : 蕁麻疹・血管性浮腫パーフェクトマスター(中山書店)2013;126-128より作成
⇒詳細はHAEの検査へ
腹痛、悪心、嘔吐、下痢などの消化器症状を伴うことがありますが、急性腹症と似た症状を呈するため注意が必要です。
⇒詳細は腹痛の鑑別へ
浮腫を診たときには、血管性浮腫を疑う前に一般的な浮腫の鑑別が必要です。まず、浮腫の診察のポイントは、病歴聴取と身体診察です。身体診察では浮腫の部位、浮腫の性状を判断します。
鑑別疾患は多様ですが、慢性に経過する左右対称性の浮腫、指圧痕を残す浮腫は、心臓、肝臓、腎臓などの基礎疾患が疑われ、血管性浮腫とは異なる病態です。
→非圧痕性浮腫は、甲状腺機能低下症、リンパ浮腫を考慮。HAEは非圧痕性。
→fast edemaでは、3ヵ月以内の低アルブミン血症
→slow edemaでは、心不全など静脈圧の上昇により起こる浮腫を考慮
※圧痕浮腫:軽く開いた3本指(第2〜4指)で浮腫面を5〜15秒ほど強く圧迫し、指を離した後に凹凸を確認する。また、pit-recovery timeを測定する。回復時間が40秒未満をfast
edemaと呼び、それ以上の浮腫をslow edemaという。
わが国における血管性浮腫の実態調査2)では、411例の血管性浮腫のうち原因不明の特発性血管性浮腫が最も頻度が高く全体の46%を占めました(図2)。Ⅰ型/Ⅱ型HAEが13%、Ⅲ型HAE(HAE with normal C1-INH)が2%と、HAEが血管性浮腫全体の14%を占めることが報告されています。
血管性浮腫は、主にブラジキニンに起因するものとマスト細胞を介したヒスタミンに起因するものに大きく分けられます(図3)。その主な違いを表2に示します。
血管性浮腫の原因はさまざまですが、原因によって治療が異なるため、鑑別が必要です。主な血管性浮腫の特徴を下記に示します。
血管性浮腫は、真皮深層から皮下組織または粘膜組織に発症する限局性の浮腫性変化です。突然、浮腫が現れて跡形なく消える点は、蕁麻疹と似ています(表3)。蕁麻疹は主として皮膚の真皮上層に起こるのに対して、血管性浮腫ではもっと深い真皮中層〜深層で起こります。蕁麻疹は、赤みや痒みが強いのに対して、血管性浮腫では概して赤みや痒みはなく、隆起性の境界明瞭な膨疹形成はありません。腫れがひくまでの時間は、蕁麻疹では通常、数時間以内であるのに対して、血管性浮腫では1〜3日ぐらいかかります。
蕁麻疹と血管性浮腫が併発する場合もあり、食物アレルギーや薬物アレルギーによるアレルギー性の血管性浮腫の多くは、痒みのある蕁麻疹を伴います。 一方、ACE阻害薬などの降圧薬、経口避妊薬(ピル、エストロゲン)、線溶系酵素などによる非アレルギー性の薬剤起因性血管性浮腫やHAEの場合は、蕁麻疹を合併しないのが特徴であり、蕁麻疹の有無は血管性浮腫の原因を判断するために有用な所見です。
原因不明の激しい腹痛を繰り返す、あるいは家族に同様の症状があるといった場合や、窒息を起こす気道浮腫などを診た場合は、HAEを原因疾患の1つとして常に念頭に置くことが大切です。ここでは、腹痛、喉頭浮腫における鑑別のポイントを紹介します。
遺伝性血管性浮腫(HAE)では、再発性の腹痛がみられます。ドイツの報告では、主な随伴症状として、嘔吐70%超、下痢40%超、めまい約90%が認められ、まれにショックや意識障害、テタニー、血便、腸重積なども生じるとされています1)。
腸管の浮腫による腹痛は激烈であることが多く、腹膜炎や消化管穿孔が疑われることがあります。激しい腹痛でも一般的な急性腹膜炎とは異なり、多くの患者さんでは、発熱、腹膜刺激症状、CRPや白血球数の増加を呈しません2)。
重度の発作でもCRPは上昇せず、好中球の増加や脱水による血液濃縮(赤血球数とヘマトクリット値の増加)を生じます3)。
HAEとすでに診断がついている患者さんでは、腹痛が以前と同様であれば画像検査は診断に必須ではありません。しかし、未診断の患者さんでは、画像検査で小腸の浮腫性変化・腹水貯留を認めるため(図1:腹部CT画像において、左右それぞれの矢印部分)、急性腹症として緊急開腹手術に至ってしまう場合があります。日本全国の専門医94名、患者さん171例によるアンケート結果によって、
2.9%の患者さんが不要な開腹術を受けていることが報告されています4)。
HAEを急性腹症の鑑別疾患の1つとして知っておきましょう。
米国NY州における検討では、血管浮腫による緊急入院はアナフィラキシーや蕁麻疹による入院より多いことが報告されています5)。
HAEによる喉頭浮腫では、顔面浮腫が先行することが特徴です。HAEの顔面浮腫は限局性の浮腫であり、アナフィラキシーとは異なり、蕁麻疹を伴いません。
ドイツの報告では、致死的な喉頭浮腫を起こしたHAE患者さんの半数で、顔面浮腫が先行または併発していました6)。また、顔面浮腫の発生から致死的な喉頭浮腫の発生までの期間は平均1.4日でした6)。HAEの患者さんに対しては、顔面浮腫が起きたときは喉頭浮腫による気道閉塞に進展する恐れがあるので、直ちに救急外来を受診するように指示してください。
耳鼻咽喉科の先生方は、咽喉頭領域に血管性浮腫が生じた場合に、診察されることが多いと考えられます。
わが国の耳鼻咽喉科を受診した血管性浮腫患者さん17例を対象に、頭頸部領域の血管性浮腫の臨床的特徴を調べた検討では、症状として、全例が咽喉頭の違和感を訴え、発話障害91%、摂食・嚥下障害85%、呼吸困難感48%が認められました7)。腫脹部位は、延べ件数(24件)では、軟口蓋など咽頭領域が21件(88%)と最も多く、舌18件(86%)が続きました。血管性浮腫の原因を特定できた8例のうちHAE患者さんが1例含まれていました。その他は、後天性C1-INH機能低下(AAE) 1例、薬剤性4例(ACE阻害薬2例、ARB 1例、エストロゲン製剤1例)、アレルギー性 2例(エビ、トマト)でした。原因となった食物や薬剤を中止し、エピネフリン、抗ヒスタミン薬・ステロイド薬などの投与によって、全例が改善しましたが、17例中1例(6%)は挿管管理を要しました。
血管性浮腫は、原因および発症機序にかかわらず、重度の咽頭・喉頭浮腫をきたして窒息を招く恐れがあり、気管挿管や気管切開など、迅速な対応が必要となります。