IBD ステーション潰瘍性大腸炎・クローン病
潰瘍性大腸炎病因
潰瘍性大腸炎(UC)は遺伝的素因や環境因子などさまざまな因子が関与する複雑な免疫異常が病態と考えられていますが(図)、病因解明には至っていません1)。
■ 遺伝的素因
UCと関連する複数の遺伝子座が報告されています2)。また、家族内での発症も認められており、何らかの遺伝的素因が関与していると考えられています。
■ 環境因子
UCの原因は解明されていませんが、ある種の食餌内容(砂糖菓子の摂取)との関連が指摘されているほか、食生活の欧米化や衛生状態の変化といった環境因子が影響していると推測されています1)、3)。また、経口避妊薬の使用はUCの発症と、NSAIDsは炎症性腸疾患(IBD)の増悪、発症と関連があると報告されています2)。喫煙はUCに対し防御的に働くとの報告もありますが、因果関係は明確ではないとされています2)。
■ 腸内細菌
自然発症腸炎モデルマウスを無菌にすると腸炎を発症せず、IBDの腸管粘膜では腸内細菌叢の変化(dysbiosis)が報告されていることなどから、腸内細菌の関与はIBD発症において重要な因子と考えられています3)、4)が、特定の原因菌は同定されていません1)。
図:潰瘍性大腸炎の発症要因
三好潤、久松理一、日比紀文、田中良哉編:病態と治療戦略がみえる 免疫・アレルギー疾患イラストレイテッド, 羊土社, 東京, pp.206-212, 2013
引用資料
1) 三好潤、久松理一、日比紀文、田中良哉編:病態と治療戦略がみえる 免疫・アレルギー疾患イラストレイテッド, 羊土社, 東京, pp.206-212, 2013
2) 難病情報センターホームページ(https://www.nanbyou.or.jp/entry/62)(2020年10月現在)から引用
3) 日比紀文監修:チーム医療につなげる! IBD診療ビジュアルテキスト, 羊土社, 東京, pp.34-72, 2016
4) 大草敏史:モダンメディア, 60(11):325-331, 2014
【監修】国立大学法人東京医科歯科大学 消化器内科 准教授 長堀 正和 先生