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循環器いろは

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「ニモカカワラズ」を変える!Hypertensiton Paradoxへの挑戦

vol.25No.8

減塩の重要性はわかっている…
ニモカカワラズ

𡈽橋 卓也 先生
社会医療法人 製鉄記念八幡病院

今や減塩の重要性は広く知られ、医師からの指導やメディアからの情報によって、減塩を心がけている高血圧患者さんは少なくないと思いますが、実際に減塩できている方はどれくらいの割合でしょうか?

以前におこなったアンケート調査では、75%の患者さんが「減塩を意識している」と答えられていました(図11)。また一般の方を対象とした厚労省の「健康意識に関する調査」でも、38%の方が食生活において「塩分を控えている」と答えています2)。実際に、日本人の食塩摂取量は年々減少傾向であり、減塩の啓発についてはある程度成功していると言って良いでしょう。
 しかし、先のアンケートで「減塩を意識している」と答えた方の食塩排泄量は9.4±3.8g/日で、「減塩を意識していない」と答えた方の食塩排泄量と大差なく、また日本高血圧学会の推奨値である6.0g/日も大きく上回っていました。また、食塩排泄量6.0g/日未満を達成できている患者さんは全体の約2割に留まっていたという報告もあります3)。つまり、減塩「できているつもり」で実際はできていない方が少なくないということです。
ではなぜ、このようなParadoxが生じるのでしょうか。まずは、自分がどれくらい塩分を摂っているのかがわかる、客観的かつ簡便な指標がないことが要因の一つです。加えて、どういった食品にどれくらいの食塩が含まれているかがわかりにくいことも問題でしょう。現代日本人の食生活はバリエーションが豊かですから、特定の摂取経路を断てば良いという単純な指導では、実際の食塩摂取量を減らすことは困難なのです。

図1.減塩の意識と実際の食塩排泄量(Ohta Y et al, 20041)より)

図1.減塩の意識と実際の食塩排泄量(Ohta Y et al, 2004より)
実際の食塩摂取量を知り、それをどのように減らすか、可視化するためには具体的にどのような方法がありますか?
われわれが開発した「塩分チェックシート」(図24)は、一般の方でも簡便に、おおまかな食塩摂取量が把握できる食事調査票ですが、味噌汁や漬物、しょうゆといった食品以外にも、練り物やハムなどの加工食品、麺類の汁やお菓子など、注意すべき食品があることを知っていただくのにも役立っています。「減塩」というとイメージがワンパターン化しがちですが、食習慣の異なる方では食塩摂取の経路も異なります。また、患者さんの居住環境や、誰が食事を用意しているのかといった背景によっても必要な指導が変わってきます。せっかくの減塩意識が「できているつもり」で終わらないよう、各人の食塩摂取の傾向に応じた具体的な減塩指導をおこなうことが大切です。医師が指導の時間をとることが難しい場合も、このチェックシートを使用すれば、栄養士以外のスタッフでも食事内容の聴き取りやそれに応じた指導をおこなえます。
例えば外食が多い方に対しては、お弁当に付属するしょうゆや梅干しを残す、麺類の汁は半分残すといった手軽に実践できる指導をおこなうことで、1日の食塩摂取量を1~2g程度であれば減らせます。しかし、繰り返し減塩指導をおこなっても8g/日ほどが限界で5)、それ以上の減塩をおこなうとなると、個人の努力ではなかなか難しいのが現状です。

図2.塩分チェックシート(𡈽橋卓也ほか,20134)より)

図2.塩分チェックシート(𡈽橋卓也ほか,2013より)
日本高血圧学会の推奨値6.0g/日を達成するには更なる減塩が必要に思えますが、なぜ8g/日以下への減塩は難しいのでしょうか?
まず、市販されている食品や調味料、外食に含まれている食塩の影響を完全に排除するのは困難だからです。日本高血圧学会の減塩委員会では減塩食品リストを公開していますが、これらの減塩食品は現状、常に、どこでも手に入るものではありません。通常の商品に比べて価格が高く、また保存性も低い減塩食品は、コストや売れ残りのリスクを考慮すると、すべての小売店や飲食店で容易に採用できるものではないからです。
また消費者側にとっても、減塩食品は「健康に良さそう」だけれども「高くて」「味が薄い」イメージが根強いといわれています6)。高い減塩食品と安価な通常の食品が並んでいれば、よほど健康意識の高い方でない限り減塩食品は選びづらいですよね。
加えて、モチベーションの維持も減塩の継続において難しい点の一つです。減塩には、分かりやすい成果の指標がありません。減塩による降圧作用も日々の血圧変動にマスクされてしまいます。いくら頑張っても目に見える効果がなければ、継続は困難でしょう。
したがって、8 g/日以上の減塩を達成するためには「無理せず」「知らないうちに」減塩ができるような環境づくりが必要です。つまり、同じ食品を食べているつもりでも無意識のうちに減塩できていることが望ましく、例えば食品メーカーには全面切り替えの形で減塩食品に一本化してもらい、そのためのコストを国が援助するような仕組みが求められます。各個人の減塩意識や努力に頼らず、国民全体の減塩を実現するためには行政や食品産業の協力が不可欠です。
現在の日本人の食塩摂取量は[男性]10.8g/[女性]9.2gですが7)、ここから日本高血圧学会の推奨値6.0g/日を達成するのは決して容易ではないと思われます。減塩委員会としてまず目指すポイント、そして今後の展望を教えてください。
実現可能性を考慮した中間目標として、まずは厚労省の推奨値である[男性]8.0g/[女性]7.0gの達成を各個人が目指すべきであると考えます。そこから先は国や企業を巻き込んだ取り組みが必要ですが、行政が主体となったトップダウン式の減塩運動は予算や組織の問題があり未だ難しいのが現状です。したがって、意識の高い医療者を中心とした草の根運動から、町おこし的に徐々に行政を動かしていくのが現実的であろうと思います。行政はそうした活動に対して表彰する、交付金を増やすなどの評価をおこなう役割を担う必要があります。市民と企業、双方のインセンティブが確保できて初めて、継続可能性のある活動となるからです。
加えて、子どもの減塩も重要な課題の一つと考えます。学校給食の減塩化はもちろんのこと、子どもに対する減塩教育を促進すべく、例えば前回の臨床高血圧フォーラムではキッズ・クッキングショーを通して子どもたちに減塩食を体験してもらいました。子どもの頃から減塩食に慣れ親しむことができていれば、大人になってから我慢して減塩する必要はなくなります。また、子どもが家庭に情報を持ち帰ることで、大人に対しての指導に繋がることも期待できます。
今日、減塩の重要性はある程度周知されました。ちょっとした工夫や減塩食品を上手に取り入れることで「手軽」で「まずくない」減塩が可能であることを、患者さんのみならず医療者にも知っていただく必要があります。また今後、社会の高齢化が進むと高齢者の低栄養がこれまで以上に大きな問題となることが予測されますが、「まずい」減塩食のイメージのまま無理な減塩をおこなえば食事量の減少は避けられません。6.0g/日という目標ありきではなく、それぞれの食習慣や生活背景、病態に応じた柔軟な減塩指導がより一層重要になるでしょう。
  • 文献
  • 1)Ohta Y et al:Hypertens Res 27:243, 2004
  • 2)厚生労働省政策統括官付政策評価官室委託:健康意識に関する調査,2014
  • 3)鬼木秀幸ほか:血圧 20:626,2013
  • 4)𡈽橋卓也ほか:血圧 20:1239,2013
  • 5)Ohta Y et al:Clin Exp Hypertens 32:234, 2010
  • 6)ヨミドクター「減塩に関する意識調査」(2018 年 2 月実施)
    https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20180530—OYTET50031/
  • 7)厚生労働省:平成 28 年 国民健康・栄養調査,2017
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